石松最中:静岡県森町

隻眼の侠客―森の石松

親戚の子供たちを連れて周智郡森町にハイキングに行って来ました。中心街に近い蓮華寺から大洞院に至る1時間のコースです。馬の神詣が行われていたという道で、観音池やお堂がある杉と竹の道を登って八形山を超え、ザレの先の見晴らし台で休憩し、シダの茂る道を下って大洞院に到着。

曹洞宗の古刹大洞院には、清水次郎長の子分、森の石松の墓があります。喧嘩っ早くて少しまぬけな憎めないキャラクターとして講談やドラマに描かれています。次郎長一家に詳しくなくても、金毘羅参りの船上で隻眼の侠客が「江戸っ子だってね。寿司をくいねぇ。」と言っている場面は何かしらで見聞きした事があるのではないでしょうか。そんな旅姿の石松の三度笠を模ったのがこの最中です。

51.石松最中

包みの文字はあっさりと「もなか」のみですが、三度笠の皮種には「森の石松」と入っており、中身は塩味の効いた小豆餡です。注文してから餡を詰めてくれます。抹茶餡もありますが、この日は品切れでした。

ギャンブラーのお守り?

石松の墓の碑は現在のものが3代目なのですが、アフリカ産の硬い石だそうです。いつの頃からかこの墓石をギャンブルのお守りにする輩が現れ、次第に削られて小さくなっていったためで、今では初代の墓石の残りを砕いたものがお守りとして売られています。石松が特にギャンブルに強かったということは伝わっていないようですが、効果やいかに?

51.森の石松の墓

墓の隣には清水次郎長の碑が立っており、向かいの赤い太鼓橋を渡ると、石段の先に本堂があります。楓の若葉に覆われた境内で、訪れた人は皆静かに参拝していました。参道にも楓が多く、大イチョウとともに秋には紅葉が美しいです。大洞院から西へ3kmほど行くと遠江國一宮小國神社(おくにじんじゃ)があります。こちらも美しい神社で、正月と桜、紅葉の時期は大渋滞ができます。

石松最中

栄正堂 静岡県周智郡森町森584-1 0538-85-2517 水曜定休 1個120円
太田川の森川橋西の信号近く。求肥まんじゅうを蜜漬けの紫蘇の葉で巻いた大人の和菓子「梅衣」は森町の郷土菓子で、開発者から製法を受け継いだこの店が元祖を名乗っています。両側に駐車場あります。

佐吉のふるさと最中:静岡県湖西市

トヨタグループの創始者

手筒もなかの新居を後にして北上し、鷲津の街並みから少し外れた豊田佐吉記念館に着きました。トヨタは愛知県を拠点にしていますが、グループの創始者である佐吉翁は静岡県の出身なのです。名前の読みはトヨダと濁るんですが、ついトヨタと言ってしまいますね。

記念館は入場無料で、2017年の生誕150年に合わせて展示室などが整備され、佐吉翁が最初に特許を取得した豊田式木製人力織機からG型自動織機まで、いくつかの発明品が展示されています。発明に没頭した納屋の他に、集会所や裏の小高い丘には展望台も整備され、少し離れた裏手には復元された生家があります。

50.佐吉のふるさと最中

そんな佐吉の生家をイメージした最中がこちら。茅葺屋根の古民家の皮種には、程よい甘さの小豆餡が入っています。包みには復元された生家が描かれています。

清々しく整えられた生家

門をくぐるとすぐ横に小さな展示室があります。訪れた時はちょうどG型自動織機の点検中だったのか、ガチャガチャと音をたてて動いているのを見ることができました。しばらく解説ビデオを見てから裏山へ。小径を上って下りて生家に。この日は風がとても強かったのですが、職員さんが舞い散る落ち葉を掃除していました。小径も庭もとてもきれいに保たれ気持ちのよい場所でした。

50.豊田佐吉の生家

生家から外へ出られるようなので、先に展望台に行けば上り下りを繰り返さなくてすんだなー。展望台からは浜名湖が少し見え、条件がいいと富士山も見えるそうです。咲き始めたシャガを見ながら下りてきました。花と言えば湖西市には日本に3か所しかないトキワマンサクの自生地があります。記念館より5kmほどなので行って来ました。満開には少し早かったものの、クリーム色に煙るように咲く様子が見られました。

佐吉のふるさと最中

ひので軒 静岡県湖西市鷲津3387アルカミーノ1階 053-576-0377 水曜、第1・3火曜定休 1個130円
鷲津駅から南へ800m程の信号角の商業施設内にあります。変わった建物なのですが、店が中庭を向いているので、商業施設だと分かりづらいです。注文を受けてから焼き始めるだんごは10種類以上あります。

あらい手筒もなか:静岡県湖西市

練り歩く手筒花火

浜名湖西岸の湖西市に行って来ました。湖西と聞いて思い浮かぶのは新居の関所、浜名湖競艇、そして手筒花火です。7月に諏訪神社奉納煙火があるのですが、今年も中止のようだし、いずれにせよ夏は最中のオフシーズンなので、3月下旬に行って来ました。

7月最終日曜日の祭典前、金曜と土曜の夜に数種類の手筒花火が奉納されます。筒の底が破裂しない江戸時代方式なので、以前は宿場から諏訪神社まで持って練り歩いたとのことですが、今は安全を考慮して中学校と小学校の校庭で行うようになりました。細工花火や大筒などの後、太鼓とほら貝が鳴り響くなか十数本の火柱が乱れ立つ猿田彦煙火で祭りは最高に盛り上がります。

49.あらい手筒もなか

手筒花火に因んだ最中は、竹筒を縄で巻いた手筒の形で、砂糖だけで炊いた小豆餡は粒がつぶし気味で程よい甘さです。この日は店頭にありませんでしたが、すぐに作ってくれました。同じ皮種を使ったフロランタン(アーモンド菓子)もあります。

唯一の現存関所―新居関所

東から来ると、浜名湖を渡り新居の駅を過ぎて600mほどで新居の関所があります。正式には今切関所と言い、出女のみならず入り女にも手形が必要という厳しい関所でした。明治になって各地の関所が取り壊されるなか、小学校などに利用された為、建物が残る唯一の関所となりました。かつて浜名湖の今切口(いまぎれぐち)に面していた船着き場も一部残っており、高麗門を復元したり、無料駐車場を設置するなど、周囲の整備も進んでいます。

49.新居関所と船着き場跡

さて、また手筒花火に戻りますが、花火は専門職に依頼して作っているわけではなく、町内の「花火野郎」が竹を切り出すところから火薬詰めまで自分たちで行っているそうです。花火を奉納した後の手筒は厄除けや商売繁盛の縁起物として軒先や玄関に飾るそうで、関所近くの紀伊国屋資料館内にも展示されています。

あらい手筒もなか

まんじゅや 静岡県湖西市新居町新居1529 053-594-0347 火曜定休 1個130円費税
関所から西へ進んで丁字を左へ曲がって50mほど。ホイルに包んで焼いた「花火野郎」が人気商品で、和生菓子や春限定の郷土菓子「すわま」も。店の奥ではぜんざいやかき氷が食べられます。店先に1台分の駐車場あります。