平塚最中:神奈川県平塚市

東海道の宿場町

鎌倉の帰りに平塚市で途中下車しました。以前東京での展示会を見た帰りに、車で相模川の田村の渡し最中を訪ねて行きましたが、今回は電車と徒歩の旅なので、駅から歩いて行ける場所を選びました。

平塚は東海道の宿場町だった所です。駅から目的地までの1.5kmほどを前方の高麗山(こまやま)を見ながら旧東海道を歩きます。朝鮮半島から船で大陸の進んだ文化がもたらされたのですが、上陸する際に目印となった山だそうです。旧東海道は今は大通りになっていて強風が通り抜け、街路樹のイチョウの落葉が音をたてて押し寄せてきていました。

86.平塚最中

厚みがあって大振りの最中です。両側に平塚の文字が入って、包み紙には平塚の塚や石碑が描かれています。程よい甘さの粒餡がたっぷり入って食べ応えがあります。白い皮種の白餡は粒が残り気味ですが、この大きさなのでバランスに問題無し。ひらつか市民プラザの観光案内所でも販売しています。

今を遡ること千百六十年余り

桓武天皇の三代孫、高見王の娘政子が東国へ旅した際、急病で薨去し、ここに葬られ塚が築かれました。時を経て塚の上が平らになったので、人々はひらつかと呼ぶようになり今の地名となったとのことです。ということで、やって来たのは今も残る平塚です。旧東海道の問屋場跡が江戸時代風の建屋になっている消防分団の角を住宅街に入ると、寺の左隣に平塚の塚緑地があります。

86.平塚の塚緑地

小さな緑地ですが東屋がありきれいに整備されています。門の奥に見える石柱で囲まれたのが平塚の塚です。周りにはいくつか石碑が立っていました。しばらく休憩してから帰りがけに最中店に寄り、市民プラザで木工製品の展示会を眺めてから駅に戻りました。最後に鳩サブレーを土産に買って電車へ。平塚にはまだいくつか最中があるので、また別の機会に訪れる予定です。

平塚最中

安栄堂 神奈川県平塚市平塚2-30-3 0463-31-4784 第1・3水曜定休 1個180円
平塚駅から旧東海道に出て左へ800mほど。本宿郵便局の並びで、平塚最中とあんみつの幟が目印。小奇麗な店構えであんみつの他に団子、羊羹などがあります。鵠沼海岸の有名なかき氷専門店に餡を提供している店で、気さくなご主人がいます。駐車場はないようです。

鎌倉源氏最中:神奈川県鎌倉市

イチョウ色付く鶴岡八幡宮

年内にもう一か所日帰り旅を予定していたところが冬季閉館してしまったので、急遽鎌倉への電車一人旅に変更しました。鎌倉には名刹や見所が数多くあるようですが、初訪問の今回は鶴岡八幡宮のみに絞って行ってきました。

参道の若宮大路は駅からすぐです。大路の中央に設けられた一段高い歩道が、源頼朝が作った段蔓です。鳥居をくぐってずっと先に見える八幡宮まで段蔓をゆっくりと歩きました。倒木後に芽が出たあのイチョウの若木はちょうど黄葉していました。本宮参拝後、脇に回って静かに佇む実朝のビャクシンの古木を眺め、政子石がある源氏池の小島に渡りました。ミュージアム前の静謐な平家池に比べ、こちらは鳥たちが集まり賑やかでした。

85.鎌倉源氏最中

三種類の餡にそれぞれ源頼朝と妻子の名が付けられた最中です。頼朝は焦がし種に粒餡、政子は桃色の種に白餡、実朝は緑色の種にこし餡が入っています。どれも程よい甘さで、皮種には鶴岡八幡宮の鶴の紋章と裏には八幡の文字と店名が入っています。

強風と眼福

穏やかな雰囲気の参拝の様子を記しましたが、実はこの日は前線通過に伴う強風が吹き荒れていました。和服の家族連れの幼い子は風に飛ぶイチョウ葉を拾い、学生のグループは砂埃の参道の屋台で買い食いをしていました。竹垣の修理の様子をしばらく眺めてから八幡宮を出ると、鎌倉彫の店の「葡萄美酒夜光杯」の漢詩が目に留まり、店内へ。雲紋のペントレイがいいなと思ったのですが、さすがに衝動買いできないお値段でした。

85.鶴岡八幡宮

この後、鳩サブレーのグッズを買い、小町通りを一瞥して駅へ。滞在時間は短かったのですが、様々な人がいましたね。中国の観光客は予め調べてきていたのか手水舎で作法に則って手を清めていました。行きがけの電車では伝説のスーパーモデル山口小夜子ばりの美女を見かけ、鎌倉駅では着物と洋装を掛け合わせた鎌倉ダンディーに遭遇。眼福の鎌倉旅でした。帰りに平塚に寄りましたので次回。

鎌倉源氏最中

旭屋本店 神奈川県鎌倉市雪ノ下3-3-21 0467-22-2622 月曜定休 1個200円
八幡宮の東鳥居から通りに出た信号の右の角です。豆大福やどら焼き、団子の店です。また、葛を使った12種類のアイスバーは自動販売機でも販売中です。駐車場はありませんが、隣りの有料駐車場は比較的すいているようです。

金太郎もなか:神奈川県南足柄市

足柄と言えば金太郎

天狗様の寺を後にして来た道を戻り、足柄の道の駅で昼食を取りました。「よいしょの金太郎」という市のキャラクターの人形が出迎えてくれます。県産の牛、豚、鶏を使った料理や足柄茶のそばなどのメニューが充実。デザートに足柄茶のソフトクリームを食べ、土産店で天狗や金太郎の菓子などを購入し、金太郎のふる里へ。その前に、最乗寺へ行く前に買ってあった最中がこちら。

60.金太郎もなか

まさかりを担ぐ姿とくまと相撲を取る金太郎が描かれた昭和レトロな雰囲気の最中。つぶし気味の小豆餡が程よい甘さで、余計な味がしない王道最中です。柚の白餡もあります。

金太郎伝説のふところへ

大雄山駅と足柄峠の中間に金太郎の生家があります。四万長者の娘、八重桐が嫁ぎ先一族の争いを避けて実家に戻り、金太郎を産んだということです。長者屋敷跡や金太郎の遊び石などを見て、産湯にその水を使ったという夕日の滝まで歩いてみました。キャンプ施設の先に金太郎の力水の石碑があり、少し行くと水の音が聞こえ樹々の間に滝が見えてきます。ここで滝行が行われることもあるようですが、この日は中高年の夫婦がハイキングに来ているのみでした。

60.夕日の滝

獣たちと遊んで大きくなった金太郎は源頼光と出会い、坂田金時として怪物退治をするのですが、実は金太郎伝説は足柄峠を挟んだ静岡県小山町にもあり、そちらの方が広く知られる伝説の元になったそうです。この二か所は本家争いをすることなく、協力して金太郎を盛り上げているようです。帰りは足柄峠を越えて小山町側に下りました。残念ながら雲が空を覆い、峠からの富士山は臨めませんでした。

金太郎もなか

松尾屋菓子店 神奈川県南足柄市飯沢7-1 0465-74-0127 日曜定休 1個160円
大雄山駅前通りを最乗寺へ行く途中の川の手前左手にあります。天狗煎餅やだんご、あんころ餅などもあるまんじゅう屋といった雰囲気です。店前に6台駐車できます。

てんぐ最中:神奈川県南足柄市

天狗が護る最乗寺

遠出して春の野山を楽しむべく南足柄市に行って来ました。足柄と言えば金太郎ですが、まずは天狗で有名な大雄山最乗寺へ向かいました。

大井松田のインターから南足柄へ向かう道は、曲がることなく最乗寺まで続いています。道すがら大雄山駅の脇にある和菓子店で最中を購入しました。小さな駅ですがハイキング姿の人々が次々に出てきていました。

59.てんぐ最中

大天狗の顔を模った最中です。こがし種には小豆餡、紅白の皮種には栗入りの白餡が入っています。材料には塩の表示がないのですが、塩味を感じるつぶし気味の餡で甘さは控えめです。包みの「てんぐ」の文字が天狗の横顔になっています。

火炎を背負い白狐に乗る道了尊

街を抜けるとまず桜に囲まれた仁王門が現れました。さらに杉木立の道を2kmほど行くと、道はそのまま駐車場へ入ります。20台程の区画が7~8ヵ所ありますが、開山忌が終わった直後の平日だったせいか空いていました。総受付前の広場から本堂を過ぎると奥には天狗像が護る結界門があります。そのまた奥には奉納された大きな高下駄の横に、白狐に乗り、幸運の蛇を従えた道了尊の天狗姿の像が立っています。

59.最乗寺道了尊

最乗寺は曹洞宗の寺で、開山したのは了庵慧明禅師ですが、その弟子の道了尊が近江から天狗となって飛んできて、岩を砕き谷を埋めて建設を手伝ったのです。やがて禅師がこの世を去ると、寺を護る為にまた天狗に化身して山中に飛び去りました。そうして道了尊は永遠に寺の守護神となったとのことです。道了尊天狗の嘴と狐の鼻先は、ご利益を求める人々が触るのか、つるつるに光っていました。

てんぐ最中

加藤屋菓子店 神奈川県南足柄市関本591-1ヴェルミ3 0465-74-0710 月曜定休 1個120円
大雄山駅脇の並びの1階にあります。新宿中村屋の商品も扱っていて、看板にも中村屋の文字が併記してあります。建物を周った所に市営駐車場があるのですが、短時間の客は駅の送迎用スペースに駐車しているようです。

たむら渡し最中:神奈川県平塚市

相模川の田村の渡し

茅ヶ崎市から相模川を渡って平塚市に入り、予定していた和菓子店に着くとなんと休業日。事前に調べたはずだったのに何か勘違いしていたか?ということで急遽別の最中に変更。平塚市は土地や歴史に因んだ最中がたくさんあるのですが、時間がなかったので一番近い所へ急行しました。

それが相模川の田村の渡し場に因んだ最中です。平塚と東京を結ぶ中原街道の田村の渡しは幕府直営の渡し場でした。大名行列が通る東海道の馬入の渡しを避けて、商人や庶民は田村を利用する人が多く、また大山参詣の大山道の渡しとしても賑わったそうです。田村と馬入の間の四之宮にも渡し場があって、こちらは自主運営で地元民が利用していたようです。

たむら渡し最中

若草色の包みは粒餡で、皮種の桃色が透けているのが白餡です。皮種には蓑を着て舟を操る船頭の姿があり、「たむら」と店名の「いつつや」の文字が表と裏に入っています。焦がし種のつぶ餡は程よい甘さで、少し粒が残る白餡は焦がしていない皮種によく合う最中です。

今は石碑が残るのみ

お店の人から田村の渡しは神川橋あたりにあったそうだと聞き、堤防に行ってみました。渡し場の痕跡を探して神川橋付近を行ったり来たりしていると案内板を発見。橋のたもとだったのですが車で入れず、犬の散歩中の方に教わってやっと渡し跡の石碑に辿り着きました。今は石碑と解説板があるのみで、草が立ち枯れていてなんだか寂し気です。

田村の渡場跡

平塚市と寒川町の間に架かる神川橋の上流側には取水堰があって、白鷺らしき鳥たちの姿がありました。歌川国芳の浮世絵「相州大山道田村渡の景」には寒川町側から見た渡し場と大山が描かれています。同行者の車を寒川側に待たせ、500メートルほどの神川橋を歩いて渡り、帰途に就きました。

たむら渡し最中

井筒屋 神奈川県平塚市田村6-4-14 0463-55-0053 月曜定休 1個170円
売り場の横の工房は通りから見えるようになっています。昔ながらの雰囲気の素朴な店ですが、酸味が少なく甘い苺の大福で有名な店で、夏にはカフェオレ大福も人気だそうです。店の前に小さな1台分の駐車スペースがあります。