絵島生島最中:長野県伊那市

花より最中の高遠城址

先日南信州に行ったばかりですが、別の旅の仲間がアスパラ狩りに行くというので、また伊那市まで同行しました。

農園はいちごフェア目当ての客で大繁盛。我々のアスパラ狩りはすぐ終わって、木のおもちゃに色を塗る体験に参加するというので、二手に分かれ、和菓子店に寄ってから高遠城址公園へ。桜の最盛期には伊那インターから高遠までの10kmが大渋滞するらしいですが、今年は開花が早く1週間前に既に散っているのでストレス無く移動できます。花より団子ならぬ、花より最中ということで。

72.絵島生島最中

四角い最中は絵島と書かれた半分に白餡、生島のほうには粒餡が入っています。どちらも程よい甘さです。美しい包みの裏には、叶わぬ二人の恋をせめて最中でと二つの味を併せましたと、店主の言葉が載っています。

大奥の勢力争いの犠牲者か

江島生島事件は七代将軍徳川家継の時代、大奥年寄の江島が将軍生母の代理で増上寺に参った帰り、歌舞伎を見に寄って門限に遅れたことが発端でした。役者の生島との関係を疑われ、綱紀粛清で江島は高遠に、生島は三宅島に遠島となり、他にも1400名が処罰を受けました。その後小説「絵島生島」により広く知られるようになりましたが、どうやら大奥の勢力争いが絡んでいたようで、生島を長持に潜ませ大奥に招き入れたというのは、フィクションのようです。

72.江島囲み屋敷

高遠の桜はすっかり散っていましたが、バスツアーでやって来る観光客でそこそこ賑わっていました。城址公園の下には高遠町歴史博物館があって、江島の囲み屋敷が敷地内に再建されています。元はここから3km程の三峰川の上流にあったようです。江島は27年間幽閉されていましたが、晩年は屋敷の周りの散歩を許されたり、高遠城で作法の講師を務めるなどしたようです。生島のほうは江島が亡くなった翌年に、将軍となった吉宗の恩赦で江戸に戻ったと伝わっています。

絵島生島最中

菊香堂 長野県伊那市坂下旭町3300 0265-72-2751 水曜定休
飯田線の伊那市駅と伊那北駅の中間あたりの県道146号沿い、伊那郵便局の近くです。高遠饅頭やパイまんじゅう、焼きドーナッツなどもありますが、上生菓子は細工が美しく味も一級品です。駐車場はないので、店前に停めてくださいとのことです。

塩もなか:長野県大鹿村

塩泉の謎

道の駅巡りをしている旅の仲間と共に、南信州に行ってきました。南アルプスと中央アルプスに挟まれた飯島町の道の駅を回ってから、天竜川の南アルプス側の支流小渋川のダム湖を超え、やって来たのが人口1100人の大鹿村。村民歌舞伎と山塩の村です。

ここには食塩泉の温泉が湧いていて、古事記に登場する建御名方神(たけみなかたのかみ)が鹿狩りの際に見つけたとか、弘法大師が塩の調達に難儀していた村人の為に湧き出させたとかという伝説が残っています。明治になると岩塩を探しに鉱山師がやってきましたが、結局見つかることはありませんでした。現在では日本列島が形成される途中で閉じ込められた海水が源と推測されています。この温泉水からできる塩は、村内のみで販売されています。

71.塩もなか

塩が白餡の甘さを引き立てています。皮種には篆書体の「味」と「楽」が、包みの鹿の絵の下には歌舞伎と鹿のキャラクターのおすみつきシールが貼られています。塩もなかには同じ皮種の焼いも、黒ごま、小豆餡のよもぎがあり、違う皮種でくるみと栗があります。

中央構造線の露頭

最中を購入した後、中央構造線博物館に寄りました。九州東部から関東まで日本列島を横断する世界第一級の断層が中央構造線です。構造線をはさんだ地質の分布が石の実物で展示されており、地滑りなどの資料映像と窓からは大西山の大崩落の跡がよく見えます。地質の分かれ目が露出している安康露頭に行ったのですが、道が傷んでおり、露頭のすぐ手前で通行止めになっていました。仕方なく引き返し、村の反対の端の北川露頭まで行ってきました。両方とも国の天然記念物です。

71.中央構造線北川露頭

日本一美しい村連合に加入している大鹿村ですが、伝説の大池への道や夕立神パノラマ展望台への道も通行止めでした。高地でしか育たないヒマラヤの青いケシの農園もあるので、夏までには復旧するといいですね。最後に塩の里直売所によって山塩アイスを食べ、薄緑色の川床が美しい塩川をしばし眺めてくつろぎました。太古の昔に海洋プレートが運んできたものに出会える山間の村でした。

塩もなか

歌舞伎の里大鹿 長野県下伊那郡大鹿村大河原390 0265-39-2844 無休(臨時休業あり) 1個150円(他の種類は180円~)
国道152号の小渋川沿いにある道の駅です。歌舞伎や鹿をテーマにしたグッズや大鹿唐辛子の商品があり、レストランではジビエ料理が食べられます。地元民のためのコンビニを兼ねているようです。塩川沿いの塩の里直売所でも販売されています。

天来最中・小琴最中:長野県佐久市

現代書道の父

比田井天来(ひだいてんらい)という人物を知っていますか?「書は芸術である」として新境地を切り拓いた、現代書道の父と呼ばれる書家です。佐久の最中を調べていて初めて知りました。下仁田からの帰りに佐久を通るので、行って来ました。

荒船風穴と神津牧場の後、コスモス街道を通って長野県の佐久市に出ました。佐久と言えば鯉ということで鯉最中があるのですが、この日は定休日だったのでまたの機会に。千曲川を渡ってそのままずっと西に10kmほど進み、佐久市に合併された元の望月町まで行きました。

天来最中・小琴最中

横が7.5cmと大振りの天来最中の皮種には別号の「畫沙(かくさ)」の落款、裏には天来と入っています。 妻の小琴(しょうきん)の名が併記された小さめの最中は、同じ落款に裏は小琴となっています。少し甘めのつぶし餡で、食べ応えがあります。包み紙の上の落款はこれも別号の比田井象之です。

記念館と自然公園

市役所の隣にある天来記念館は日本初の書道専門美術館だそうで、天来の作品や筆、落款などが展示されています。かな書道の最高指導者だった小琴や、門下生たちの作品も見ることができます。また生家の裏山には地元のNPO法人が整備した天来自然公園があり、天来と門下生の書の石碑が9基建っています。公園へ続く道には案内板があるのですが、その先は木々が覆いかぶさる細い道です。公園に入る小径の前に車が方向転換ができるスペースがあってほっとしました。

天来自然公園

書道家の聖地として毎年訪れる団体もあるようで、秋にはこの公園で天来祭りが催されます。望月町が佐久市と合併してから、天来の影が薄くなってしまったと嘆く人もいるそうで、なんとか盛り上げようとしているようです。また、望月地区には3千体もの石仏が町のあちこちにあり、石仏の里とも呼ばれています。

天来・小琴最中

喜月堂 長野県佐久市望月168 0267-53-2012 第1・第3日曜定休 1個180円/130円
天来記念館の近くの旧中山道沿いにあります。一般的な菓子も売っている庶民的な感じの店です。駐車場はないようなので、店の前に停めました。