猿蓑もなか:三重県伊賀市

松尾芭蕉は忍者だったのか

伊賀出身だからって忍者とは限らんでしょ。と思いますが、裕福ではなかった芭蕉が奥の細道の長旅の路銀をどうやって工面したか。46歳にしてはかなりの健脚。当時公儀隠密は江戸に住んでおり、芭蕉も江戸住まいだった。こんな状況から、諸藩の内情を探るため幕府が遣わした隠密との説があります。なるほどねー。

芭蕉が奥の細道の旅を終え、伊勢の神宮から伊賀に向かった際、国境の長野峠で詠んだ句があります。「初しぐれ猿も小みのをほしげ也」ユーモラスな句との解釈と、山中で冷たい雨に濡れる猿の姿に己を投映したという正反対の解釈があります。2年後に別の俳人二人によって編纂された俳句選集の巻頭に掲載され、その書名も「猿蓑」と付けられました。

80.猿蓑もなか

小蓑と笠を模ったヒメノモチの皮種に、甘さ控えめの大納言の粒餡がたっぷり入っています。芭蕉の猿蓑の句が書かれた包みは茶色が粒餡、薄緑色はレーズンの甘みが効いた白餡です。

長野峠にて時雨にあう

伊賀上野城を散策した後は、忍者ショー見物組と分かれ、街中から20km東の長野峠にやって来ました。津市との境にある長野トンネルの上に続く道に入っていくと道の脇に石碑がいくつか立っています。一際高い場所にあるのが猿蓑の句です。折しも小雨がぱらついてきて、雰囲気満点。芭蕉がここを通ったのもこの時期だったようです。

80.長野峠の句碑

峠を後にし、中心街との中間にある旧平田宿で最中を買い求め、城に戻りました。伊賀には和菓子店が多く、しかも団子、餅、煎餅など、それぞれの専門店が多いようです。高虎さんのどら焼きや忍者の兵糧玉のような菓子もあり、クーポンで様々な和菓子が楽しめる「城下町お菓子街道」の企画には15店が参加しています。

猿蓑もなか

つばや菓子舗 三重県伊賀市平田383 0595-47-0029 月曜定休 1個175円
伊賀上野城の南の国道163号を東へ10kmほどの平田宿の旧伊賀街道沿いにあります。漢字では津波屋。伊賀の郷土菓子の背黒(せえくろ)餅は正統派を名乗っています。駐車場1台分ありますが、店前への駐車も大丈夫です。

鬼屋敷最中:三重県伊賀市

高虎さんと忍者の街

涼しくなったので日帰りで秋の行楽に出かけました。旅行三昧の旅の仲間一家に声を掛けたら二つ返事で行くとのこと。自身も仕事で幾度も訪れた伊賀市です。

まずは伊賀上野城近くのだんじり会館を見学して城跡の公園へ。旅の仲間が忍者屋敷や手裏剣の体験をしている間に、藤堂高虎の高石垣を見学。天守西側の高石垣の上には柵などが無く危険!30mの高さから慎重に内堀を見下ろしてきました。因みに天守は建築中に大暴風で倒壊し、その後再建されませんでした。今あるのは昭和の復興天守です。伊賀市民に高虎さんと呼ばれ、その名に掛けた虎模様のどら焼きがあるのですが、最中はと言うとこちらの鬼の最中です。

79.鬼屋敷最中

上野天神祭に登場するひょろつき鬼の最中です。鐘を背負ってひょろひょろと歩く姿が模られ、皮種の背中側には鬼屋敷の文字が入っています。柔らかめで程よい甘さの王道の小豆餡です。

上野天神祭の鬼行列

天神祭は先週だったのですが、最初に行っただんじり会館で鬼行列が展示されています。祭りでは別の場所から出る二つの神輿の後にそれぞれ別の鬼行列が続きます。修験道の開祖役小角が手下の鬼を引き連れる行列と、鬼退治をした鎮西八郎為朝(源為朝)の凱旋行列です。ひょろつき鬼は役小角列の後半にいて「釣鐘(つりがね)」「笈持(おいもち)」と「斧山伏(よきまぶし)」2体の計4体が、沿道の人々の近くにひょろひょろと寄ってくるのだそうです。

79.大御幣、ひょろつき鬼とダンジリ

鬼行列の先頭には悪鬼という名の鬼もいますが、悪は強いという意味で、邪を払う役目があるそうです。伊賀の子供たちは皆、ひょろつき鬼に近寄られて一度は泣くそうですよ。国の重要無形民俗文化財とユネスコ無形文化遺産に指定されています。人混みは苦手なほうですが、一度は見てみたくなりました。次回は伊賀の有名人に因んだ最中です。

鬼屋敷最中

御菓子司おおにし 三重県伊賀市上野中町3009-1 0595-21-1440 不定休 1個130円
本町通りにあり、看板猫の黒猫くうちゃんが出迎えてくれる店です。明治創業当時の雰囲気で、時代もののレジスターがあります。お土産処で売られている忍者最中はこの店の品で、伊賀名物の丁稚羊羹のカップ入りもあります。昔の街並みなので店の駐車場はありません。

椎茸の里:三重県いなべ市

山々を臨む農業公園

3月に入ってしまいましたが、今年最初の最中旅に出かけました。東海エリア最大級の梅まつり開催中のいなべ市です。10日程前から始まっていたのですが、梅林がある農業公園は気温が低く、全体の三分の一くらいしか咲いていませんでした。それでも訪れる車が入口で列をなし、犬連れの家族や中国人女子グループなどが、薄っすらと雪を被った山々をバックにした梅林にカメラを向けていました。

会場内には飲食コーナーもあるのですが、花粉が舞う屋外でマスクを外せないので、来る途中にあった赤そばの店で昼食をとり、椎茸最中がある市街地の和菓子店に向かいました。椎茸は全国的に見ると有名な産地がたくさんあるのですが、いなべ市も生産に力を入れているということなのでしょう。

71.椎茸の里

椎茸が生えたホダ木の形になっています。かつては市内6店舗で販売していましたが、今は2店舗になりました。餡は店毎に異なり、こちらはこし餡に椎茸エキスが入っていて独特な風味です。もう1店はいつも最中があるわけではないらしいですが、椎茸入りだそうです。

賑わう街中

最中と梅以外のもう一つの目的が軽便鉄道博物館です。三岐鉄道北勢線の終着の阿下喜(あげき)駅にある小さな無料の博物館です。ボランティアで運営しており、第1と第3日曜のみの開館で、展示車両の周りを走るミニ電車に乗ることができます。順番待ちの列ができる盛況ぶりで、大人も乗れます。もちろん乗りましたよ。三岐線には貨物鉄道博物館もあり、そちらも寄付とボランティアで運営されています。

71.軽便鉄道博物館

街中ではちょうど雛人形のイベントが開かれいて、マップを手にした人々が商店や寺などに飾られた雛人形を目指して歩き回っていました。和菓子店では順番待ちの客に、地元客や店の人が気さくに話しかけていました。他にも5月上旬には農業公園でぼたんまつりが、5月下旬には自転車レースのツアー・オブ・ジャパンいなべステージが開催されます。この日もサイクリストを多く見かけました。意外に賑ういなべ市でした。

椎茸の里

松寿園菓子舗 いなべ市北勢町阿下喜1999-1 0594-72-2330 水曜定休 1個130円
阿下喜駅から北へ信号2個目を左折して150mほど、ウッドヘッドの斜め向かいです。ピーナツ形のきな粉の干菓子や大福、まんじゅうが中心。手作り小物が飾られ、教室を開くこともあるようです。駐車場はありませんが、週末は商工会のウッドヘッドに、平日は短時間なら店前にとのことです。

勾玉最中五季節の祈り:三重県伊勢市

伊勢神宮に演奏を奉納してきました

伊勢神宮内宮の参集殿は休憩所になっていて、その奥には様々な芸能集団が奉納を行う能舞台があります。天皇即位の祝賀で庖刀式が奉納されたのですが、これに奉納者の一人として参加してきました。

庖刀式とは手を触れずに魚を捌いて神前に捧げる儀式で、その伴奏を務めることになったのです。烏帽子と直垂の装束で庖丁刀と真魚箸で儀式を執り行う厳粛な雰囲気のなか、精神統一して演奏することができました。

勾玉最中ー五季節の祈り

さて、こちらは神宮での祭事に使われる五色絹から命名した最中で、五季節と書いて「ごしき」と読みます。翡翠色の皮種の伊勢茶餡はホワイトチョコレートの粒入りで、お茶の香りの後に洋風の甘味がやって来ます。他にも柚餡やメープル餡、季節限定の桜餡もあります。

年間祭事一五○○回

伊勢神宮については説明するまでもありませんが、内宮と呼ばれる皇大神宮には日本国民の総氏神である天照大神をお祀りしており、ご神体は三種の神器のひとつである八咫鏡です。外宮の豊受大神宮は衣食住と産業の神である豊受大御神をお祀りしています。国民の幸せを祈る祭りや神様に食事をお供えする祭りは神宮全体で年間1500回以上もあるそうです。

今回は奉納の準備から撤収までの5時間を参集殿で過ごしたので、内宮の参拝だけになってしまいました。次回は外宮やおはらい町もゆっくり見てみたいです。上の画像は五十鈴川で手を清めた際に撮りました。正宮は階段下からの撮影が許可されていますが、人が多かったのでやめておきました。神宮を出て市営駐車場横の赤福の店でぜんざいを食べ、帰路に就きました。

勾玉最中五季節の祈り

勢乃國屋 三重県伊勢市宇治今在家町117 0596-23-5555 無休 5個入り950円
宇治橋から徒歩1分の観光バス駐車場の隣です。看板商品の神代餅は粒餡のよもぎ餅。また、オーソドックスな小豆餡の勢乃國最中もあります。2階では松阪牛や伊勢うどんなどの食事もできます。