湯猪:静岡県伊東市

猪が見つけた温泉

伊東は天狗もなか以来の2回目の訪問です。今回は伊東にいくつかある元湯の中から、猪戸の元湯に由来する最中を目指してやって来ました。

昔、伊東が草深い田舎だった頃のことです。傷ついた猪が泉に浸かり、しばらくすると元気になって帰って行ったそうな。その泉は温泉で、その辺りは猪渡(ししと)と呼ばれるようになったとさ・・・という話が伝わっています。そののち猪戸(ししど)と名を変えて湯治客が集まる温泉地として発展したのです。

88.湯猪

読みは「ゆじし」で、小振りな猪の皮種に程よい甘さの粒餡が入っています。今はばら売りは無く、5個、7個、12個入りなどのパックで売られています。包装紙には気持ちよさそうに湯に浸かる猪が描かれています。伊勢の神宮への献上菓子だそうです。

お馬の湯にまくら投げも

猪戸通りは市街のほぼ中央にあります。今は湯が出なくなってしまったそうですが、ラフォーレ伊東温泉の駐車場に元湯権現があるというので行ってみました。大きな木の根元に隠れるように、小さな祠が祀られていました。また、猪戸通りには2体の猪の像がありますが、東側の像が設置されていたスルガ銀行が別の建物になるらしく、そこにあった像が西側のもう1体の場所に移されていました。台座には猪戸元湯の由来が記してあります。

88.猪戸通りの猪像

一方、同じ猪戸エリアで伊東駅近くにある出来湯は、農耕馬を癒したとしてお馬の湯とも呼ばれ、出来湯権現では毎年祭事が行われているようです。さて、通り沿いの店を見てまわっていたところ、あるポスターが目に留まりました。「全日本まくら投げ大会」第12回が今年2月24日と25日に開催されるとのこと。伊東を盛り上げたいという地元高校生の思いから始まり、最近では地方大会も開かれるようになっているそうです。伊東にはまだ最中があるので、また来ますよ。

湯猪

文寿堂菓子店 静岡県伊東市猪戸1-2-3 0557-37-3293 水曜定休(季節により変動)5個入り700円~
猪戸通りの中央寄りで、湯ノ花通りの角から西へ4件目です。「湯猪 文寿堂」の看板を掲げていて、一番の売りは湯猪ですが、だんご、まんじゅう、赤飯などの他に蒸しマドレーヌもあります。柔和な雰囲気の女将さんが対応してくれます。

あたみ桜:静岡県熱海市

梅は咲いたか 桜は・・・咲いてる!

熱海は1月から2月にかけて梅園を訪れる観光客で賑わいますが、同じ時期に桜も満開を迎えます。早咲きのあたみ桜という品種です。2月の始めに旅の仲間たちと車で出かけてきました。

梅園の横を通って市街に入り、糸川橋近くの駐車場に入りました。糸川橋脇にはあたみ桜の基準木があり、桜並木が続くこの川沿いがさくら祭りの会場になっています。中国語の会話が聞こえるなか、タイの人かな?一人旅の女性に撮影をお願いされたりしながら桜並木を端まで歩いた後、熱海七湯の間歇泉などに寄りながら駅前まで行き、和菓子店にて最中を購入。

87.あたみ桜

程よい甘さの粒餡に桜の塩漬けが一輪入っており、食べ進めて桜にたどり着くと香りと塩味のアクセントが楽しめます。最中全体の厚みはそれほど無く、個装の淡い色合いとともに品のいい仕上がりになっています。塩漬けには梅酢が使われているようです。

桜の下で剣舞を堪能

さて、このさくら祭り、週末には日替わりでちょっとしたイベントが催されています。剣舞があるというので、開始時間に合わせて予定を組みました。音楽が鳴って、色鮮やかな振袖に黒の男袴を着けた女剣士が登場すると殺陣が始まりました。男性は煌びやかな袴で扇の舞を披露。演歌に合わせた芝居的な演目もあり、刀の他にも小太刀や槍も登場して、最後は全員で大立ち回り。雅魅(みやび)という殺陣パフォーマンス集団でした。なかなか楽しかったですよ。

87.糸川沿いのあたみ桜

駅前から再び糸川沿いを通り、途中でふるまわれていた桜湯を頂きました。ふと見ると桜の密を吸いに集まっているメジロに皆がカメラを向けています。こんな人混みでもメジロは来るんですね。この後は伊豆半島東岸を南下して伊東市へ向かいました。

あたみ桜

御菓子処一楽 静岡県熱海市田原本町5-5 0557-85-7222 不定休 1個220円
熱海駅前の平和通り名店街のほぼ中央にあります。季節によって数種類がある浮島生地を使った和菓子や大福の他に、米粉ドーナツや熱海檸檬などの焼き菓子やプリンなどもあります。駅からは徒歩2分です。

天狗もなか:静岡県伊東市

函南から峠を越えて

秋スイカって聞いたことありますか?伊豆半島の付け根の函南町がスイカの産地で、秋に収穫されるスイカが9月の終わり頃に出回ります。果物好きの旅の仲間に同行し函南町に行くついでに、少し足を延ばして伊東市に行ってきました。

函南から峠を越えて海沿いを南下、ハトヤホテル近くの道の駅で昼食をとって市内へ。伊東には温泉や景勝地、僧の日蓮に因んだ最中があるのですが、今回は佛現寺に伝わる天狗伝説の最中を目指しました。

78.天狗もなか

大天狗の皮種の最中には3種類の餡があります。少し甘めの粒餡と、ほんのりとした塩味がちょうどいいこし餡、ピンクの皮種の白餡です。今回ピンクの種が品切れだったのですが、白餡にはレモンが入っているそうです。

解読不能な天狗の詫び状

万治元年(1658年)伊東と修善寺の間の柏峠に天狗が現れ、旅人に悪さをするので困っていました。豪傑で知られた伊東の佛現寺の日安上人が祈祷、読経のすえ、ついに天狗を捕らえて鼻を捻り上げると、天狗はたまらず松の上に逃げて行きました。後でその松を切り倒すと一巻きの紙が落ちてきました。その後天狗は姿を消したので、巻物は天狗の詫び状であろうと寺に持ち帰りました。

78.佛現寺と天狗の詫び状写し

詫び状は今でも佛現寺に保管されており、事前に申し込むと写しを見せてくれるそうです。寺で買える天狗羊羹には、包み紙の裏側に詫び状の一部が印刷されています。2900文字のうち一文字も解読されていないという摩訶不思議な代物で、さらに「天狗の髭」なるものも寺宝として保管されているとのことです。寺は日蓮宗本山の一つで、宝塔からは伊東の街並みと海が見えました。

天狗もなか

玉屋 静岡県伊東市和田1-6-5 0557-37-2582 日曜定休 1個172円
伊東温泉暖香園から伸びる一方通行の玖須美温泉通り200mほどの所です。控えめな店構えなので通り過ぎ注意です。寺にある天狗羊羹はこちらの店の品で、赤い包みは小豆、緑の包みはレモン入りの白餡です。洋菓子もあり、優しい女将さんが対応してくれます。車は店側に寄せて止めました。

深海もなか:静岡県沼津市

最中のオフシーズンではありますが

旅の仲間が、某自動車メーカーの夏休み謎解き企画で沼津に行くというので便乗しました。沼津と言えば深海魚ですが、小説家の芹沢光治良の故郷でもあり、狩野川には渡し舟もあるということで楽しみに出かけました。

まず狩野川河口の伊豆半島側にある我入道(がにゅうどう)公園へ。旅の仲間が謎解きをしている間に、芹沢光治良記念館を見学。文学者の記念館なので展示物は地味でこじんまりとした館内なのですが、ひとりでのんびり見ていたら昼時にもかかわらず次々に見学者がやって来ていました。その後すぐ近くの牛臥山公園と沼津御用邸記念公園を回って、水族館や海産物の店が建ち並ぶ沼津港で昼食を注文し、料理を待つ間に最中を購入。

64.深海もなか

シーラカンスの皮種に自分で餡をはさむタイプの最中です。粒餡と富士山抹茶こし餡の2種類があり、程よい甘さの柔らか餡です。バラ売りは化石ブラウンと名付けられた焦がし種のみですが、箱入りや紙コップ入りは深度毎のイメージのカラフルなセットです。

日本一深海に近いまち

駿河湾は深度2500メートルと日本一深く、2位の相模湾との差はなんと1000メートル。沼津市は駿河湾の奥に位置するのですが、駿河トラフが湾の奥まで延びているため多くの深海魚が獲れます。タカアシガニで有名な戸田(へだ)港には駿河湾深海生物館があり、深海魚撮影会も開催しています。沼津港には深海水族館シーラカンスミュージアムがあり、みなと新鮮館前の通りは観光客でごった返していました。

64.我入道の渡し

楽しみにしていた狩野川の我入道の渡し船ですが、8月は運休でがっかり。猛暑が落ち着いたらまた来ましょう。我入道は芹沢光治良の生まれ故郷で、自伝的小説「人間の運命」の幼少期はこの地が舞台になっています。網元の家に生まれますが、両親が新興宗教に全てを捧げ、出て行ってしまいます。大正から昭和前期の戦争や関東大震災、スペイン風邪の時代の読み応えがある13巻前後の大長編です。上の写真は沼津港側から見た我入道の渡し場付近の狩野川です。

深海もなか

しーらかんすCafe 静岡県沼津市千本港町128-1 沼津みなと新鮮館内 055-963-1515 火・水曜定休 1個300円 カップ2個700円 箱4個1500円 箱8個2800円
沼津港に隣接するショッピングモール内にあります。深海もなかがトッピングされたソフトクリームや、最中をマカロン風にアレンジしたスイーツが売りの、行列ができるカフェです。モール前が無料駐車場になっていますが、すぐ満車になります。

秋葉纏:静岡県袋井市

天狗様の引っ越し先

以前浜松市の秋葉(あきは)神社に因んだ最中を紹介しましたが、明治の廃仏毀釈で神社に変わった秋葉山から秋葉三尺坊大権現が引っ越したのが袋井市の可睡斎です。秋葉の火まつりが近づく12月中旬に行ってきました。

可睡斎には秋葉総本殿の他に、本堂、僧堂、護国塔、輪蔵堂などいくつもの建物があります。写真撮影をしていたコスプレイヤーに話しかけ、祈祷の合図の法螺貝が響くなか、落葉し始めた楓を踏みしめて境内を散策しました。家康が命拾いをしたという六の字穴は、以前入ったことがあるのですが、今は立ち入り禁止になっていました。それと、あまり知られていないのですが、下の池の端には330本余りの纏が奉納されている纏殿があります。扉のガラス越しに中を見ることができました。ということで・・・

57.秋葉纏

纏をそのまま模った最中です。紙の馬簾が巻かれてさらに纏っぽいパッケージになっています。紫の紐がかかっているのは小倉餡で、赤は白餡です。複雑な甘みの餡で、注文を受けてから餡を詰めてくれます。数店が共通の意匠で発売しましたが、今は他に1店のみで、そちらは馬簾が付いていない密封パッケージです。

家康の前で居眠り

可睡斎は元は東陽軒という名でした。家康の御前で居眠りをしてしまった和尚に「和尚、睡る可し(ねむるべし)」とかけた言葉から可睡斎と呼ばれるようになりました。1,200体のひなまつり、牡丹まつり、風鈴まつり、秋葉の火まつりなどで一年中賑わいます。また、瑞龍閣の天井画や襖絵、大庭園や日本一の大東司(だいとうす=トイレ)などは有料で拝観できます。境内を全て見るには4時間半かかるそうです。

57.秋葉総本殿

地元の人々から「お可睡」と呼ばれて親しまれている萬松山可睡斎は曹洞宗の禅道場で、遠州三山のひとつです。あとの二山も袋井市にあり、北東に位置する医王山薬王院油山寺は行基開山の真言宗の寺。孝謙天皇の眼病を治した目の霊山で、通称「あぶらやま」。そして高野山真言宗の別格本山の法多山尊永寺は「はったさん」と呼ばれ、厄除け団子が名物です。こちらは東南のエコパスタジアムの奥に位置しています。

秋葉纏

菓子司冨士屋 静岡県袋井市大門17-22 0538-42-3064 火曜定休 1個145円
可睡斎ではなく法多さんへと続く道の入口信号の近くです。かりんとう饅頭やどら焼きの他にクッキーなどの洋菓子もあり、小豆たっぷりのかき氷やぜんざいが店内で食べられます。駐車場は裏にもあります。