亀寶:静岡県焼津市

焼津の鰹節

こんな時期なので予定していた最中旅は延期にして、3月に人混みを避けて車で焼津まで行って来ました。途中、吉田町の大井川河口の広大な公園でチューリップを眺めてから対岸の焼津市へ。焼津と言えばカツオやマグロ漁の町ですから、カツオの最中があるかと思いきや、なんと鰹節の形の最中があるのです。

亀寶

「きほう」と読みます。亀節と呼ばれる形の鰹節を模った皮種に、餡は程よい甘さの小豆餡で、上品な味わいの最中です。焼津のお使い物の定番らしく、他の2組のお客さんも仕事関係で買いに来ていた様子でした。

新嘗祭に神饌として献上

正倉院の古文書に、鰹を煮て干した煮堅魚を税として納めていたと記されており、鰹の加工品は奈良時代から駿河の国の特産物だったようです。今では皇居での新嘗祭に焼津の鰹節が献上されています。最中の形にもなっている亀節は三枚に下したもので、サイズが大きいものは半分に切り分けて本節と呼び、その背側を雄節、腹側を雌節と呼びます。どれが上等なのかと思ってしまいますが、この呼び方は品質には関係ないのだそうです。

鰹オブジェ

焼津の目玉施設である焼津さかなセンターを覗いてみたら、今般の事情で当分営業を休止する店がいくつもあり、いつもは観光バスが並ぶ駐車場には4~5台の乗用車のみでした。上の写真は東名高速の日本坂パーキング上り側にある鰹のオブジェです。焼津インターから見えるマグロ店の屋根には大きなマグロの模型が乗っています。魚以外では、焼津が好きだったという小泉八雲記念館やサッポロビールのビオトープ園なんかもあります。

亀寶

白憙久 静岡県焼津市本町5-1-3 054-628-2213 水曜定休 1個150円
焼津市役所アトレ庁舎と焼津5丁目信号の間です。大きくはないですがきれいな店内には菓子博での受賞盾がいくつも飾ってあります。波志ぶきというチーズブッセも人気のようです。駐車場はないようで、店前の歩道に片輪をかけて駐車しているお客さんもいました。

大甕もなか:愛知県常滑市

とこなめ焼きの大がめ

知多半島最中旅の最後は、半島中央の西海岸側にある常滑市にやって来ました。中部国際空港、通称セントレア空港がある市です。とこなめ焼と言えば朱泥の急須が思い浮かびますが、古くは奈良時代から大型の甕や壺を生産してきた地で、近代では陶器の土管や火鉢の産地でした。市の中心部へ向かう前に、大甕を模った最中があるという店を訪ねました。

大甕もなか

自然釉のかかった甕の形の皮種に、程よい甘さの小豆餡が入っています。古くから生産が続く大甕のように、変わらない味わいを表現したという最中は、バランスのいいオーソドックスな最中です。

やきもの散歩道と招き猫通り

市の中心部の大通りの裏には陶器店や陶芸教室、作家の工房が密集している地区があります。昔の窯の煙突が残る丘には、坂道の各所に壺や土管が埋め込まれた小径が複雑に張り巡らされています。迷路のような道を行きつ戻りつしながら店先の焼き物を眺めました。甕などの伝統的な焼き物の他にも、かわいい作品や他の産地の技法を取り入れた美しい作品もあり、結構楽しめました。

焼き物の小径

常滑市陶磁器会館がある大通りは「とこなめ招き猫通り」という名が付いており、切り開かれた丘の上から巨大な招き猫が顔を出し、コンクリートの法面には様々な作家の手による個性的なご利益招き猫たちが39体並んでいます。1点ずつ見ていくとなかなか面白いですよ。

大甕もなか

早川屋製菓舗 愛知県常滑市苅屋字深田124-1 0569-35-4041 火曜定休 1個120円+税
中心街より4kmほど南の国道247号沿いで、多賀神社の向かいです。以前は苅屋町の旧道沿いに店舗がありましたが、こちらに移転しました。店先に大甕が置いてあります。白餡と生クリームを使った「知多娘(ちたっこ)」も人気だそうです。

たこつぼもなか:愛知県南知多町

日間賀島のたこ漁

河和港を後にして、そのまま知多半島の東海岸を南下し、南知多町にやって来ました。西海岸には海水浴場が、東海岸と半島先端には漁港がいくつかあり、沖の日間賀島ではたこ漁が特に盛んです。海の幸が豊富で朝市で賑わう漁港もありますが、まずは最中の店がある大井漁港に立ち寄りました。

たこ漁で使われるたこつぼを模った最中です。皮種の半分ずつに、それぞれ小豆餡と抹茶餡を詰めて合わせた珍しいタイプで、あっさりした甘さの餡がたっぷり入っています。包み紙には蛸がくねるようなひらがなの商品名の横に愛知県知事賞受賞と記されています。

弘法大師が尾張に上陸

大井の聖崎は814年に弘法大師空海が初めて尾張に上陸した地とのことで、昭和59年に海の中に出た岩の上に上陸大師像が建立されました。公園や遊歩道が整備されていて、訪れた時は河津桜が満開でした。北側の駐車場から海沿いの遊歩道に出て大師像を眺めました。遊歩道からは海の中へ階段が続いており、干潮時には歩いて大師像まで行けるそうですが、ちょうど満潮で残念。年配のご夫婦が像に向かって手を合わせていました。

聖崎を出て、その南側の高級リゾートアパートメント群をちょいと見物し、朝市が人気の師崎漁港を過ぎ、知多半島南端の羽豆岬(はずみさき:大人数のアイドルグループの歌になっているそうです)から海岸を離れ、南知多道路へと戻りました。今回は日間賀島には行きませんでしたが、1時間に2便ほどフェリーが出ており、かっぱ最中の河和や渥美半島の伊良湖とも連絡しています。たこの他フグ料理や潮干狩り、イルカとのふれあいなども楽しめるようです。

たこつぼもなか

たこつぼもなか本舗末廣軒 愛知県知多郡南知多町大字大井字真向2-1 0569-63-0319 火曜定休 1個150円
大井漁港前の信号から1本入った「つるや」の隣。大きな立て看板と、最中の餡と同じ小豆色と抹茶色の暖簾がかかっています。たこ漁については詳しくないと言いながら、女将さんもご主人も丁寧に対応してくれました。店の前に駐車場あります。

かっぱ最中:愛知県美浜町

村人を助けたかっぱの家族

知多半島の観光シーズンは夏なんでしょうが、夏は最中旅に向いていないので、花粉の最盛期がやって来る前に行って来ました。まずはかっぱ伝説が残る美浜町です。その伝説とは・・・

昔々、美浜町の河和(こうわ)にかっぱの家族が住んでいました。太郎とゆり子の夫婦と娘の花ちゃん、弟の和ちゃんです。ある時日照りが続いて村人は困り果てていました。見かねたかっぱの家族は密かに雨ごいを始め、やっとのことで雨が降りました。ところが村人たちが喜んだ矢先、子供が増水した川に落ちて流されてしまったのです。弟かっぱの和ちゃんが気付きその子を助けましたが、今度は和ちゃんが海へと流されて帰ってくることはありませんでした。

かっぱ最中

花ちゃん?お母さん?の姿のかっぱ最中。立体的なので小振りな割には餡が入っている感じです。つぶし気味の程よい甘さの餡と皮種のバランスがいい最中です。河和港近くの本店には見本しかなかったので支店で購入しました。本店にいたおばあちゃんが「おいしくてよく売れるんで、あがってみてください。」と言っていました。おばあちゃん、たくさん買いましたよ!

愛される河和のかっぱ

河和港の高速船乗り場前にはかっぱ家族の銅像があります。河和海水浴場などにもコンクリート製のかっぱの像があるのですが、古びてしまってちょっと恐ろしい姿になってきています。見かねた地元出身の方が私財を投入して河和港に銅像を作ったのだそうで、かっぱ伝説を紹介する立派な石碑も立っています。

この伝説には続きがあります。花ちゃんは鯛を抱えていますが、実はこの鯛は竜宮城の使いで、海に流された和ちゃんは竜宮城で保護されていると伝えに来たというのです。隣の武豊町には浦島太郎伝説があり、それとからめてハッピーエンディングを付け加えたようです。さらに花ちゃんにお婿さんを迎え、子供が生まれたという設定で銅像も増えました。

かっぱ最中

片弥菓子舗西谷店 愛知県知多郡美浜町河和西谷82-1  0569-82-1974  金曜定休 1個100円
町のおまんじゅうやさんといった雰囲気の本店は製造が主なので、西谷支店で購入するのがいいかと思います。河和駅から800mほどの厚生病院の前で、店の前に駐車スペースあります。

太郎最中:静岡県磐田市

霊犬の怪物退治

鎌倉時代のことです。遠州見付の村には8月に白羽の矢が立った家の娘を人身御供として神に差し出すという習わしがありました。不審に思った旅の僧が確かめに行くと、それは神ではなく怪物で、信州の悉平太郎(しっぺいたろう)を恐れていることがわかりました。信州を探し回った僧が見つけたのは、駒ケ根の光前寺に住む山犬の子でした。悉平太郎を借りて見付に戻り、娘の代わりに白木の箱に潜ませて、首尾よく怪物を倒したのでした。

磐田市と駒ケ根市は友好都市になっていますが、見付を救った霊犬の伝説を知る人は、年々少なくなってきていました。磐田市のゆるキャラが悉平太郎をモチーフにした「しっぺい」に決まってからは、この伝説もまた広く知られるようになりました。そんななか2年前の戌年に発売されたのが、太郎最中です。

太郎最中

三角耳が凛々しい犬の形の最中で、程よい甘さの粒餡と北海道産の白小豆餡があります。粒餡2個と白小豆1個の3個セットのパックには悉平太郎像の写真が載った帯が掛かっています。なぜ悉平太郎最中にしなかったのかと店の人に尋ねたところ、独自の型を使っていないので悉平と付けるのを遠慮したとのことでした。気にしなくていいのではないかと思いますが・・・。

犬も参拝OK! 見付天神

伝説の舞台となったのが、 矢奈比賣神社(やなひめじんじゃ) で、菅原道真を合祀しているため、見付の天神様と呼ばれています。二の鳥居の脇に悉平太郎の銅像があり、犬を連れて入ることができる数少ない神社のひとつです。神社の裏のつつじ公園には霊犬神社という別社もあります。つつじの頃に行ったら最中データ一覧のページに写真を追加することとしましょう。

見付天神の悉平太郎像

駒ケ根市では同じ犬が早太郎または疾風太郎と呼ばれています。駒ケ根にも早太郎最中があるので、そのうち紹介します。また、 宮城県や滋賀県にも似た話があって、字は違ってもしっぺいたろうだそうです。さて、怪物を倒した悉平太郎のその後ですが ①相打ちだった ②駒ケ根に帰る途中で力尽きた ③光前寺に戻り、和尚の顔を見て一声吠えて息絶えた ④光前寺で幸せに暮らした と諸説あります。個人的には ③ ですが、どれがいいですか?

太郎最中

井口製菓 静岡県磐田市見付2663 0538-32-3951 水曜定休 1個170円  3個セット500円
見付宿の中程にあって、見付天神の裸祭りに出される粟餅を作っています。国分寺最中で紹介した店で(2018年9月)、しっぺいグッズも販売中。