姫様もなか:静岡県浜松市

東海道の別道―姫街道

細江の街で銅鐸最中の店と間違えて入った店で姫様もなかを発見しました!その名の由来は、東海道から外れて浜名湖の北を通る姫街道です。江戸時代に浜名湖の渡しやチェックの厳しい新居の関所を避けて気賀の関所を通る女性が多く、大名家や公家の女性も利用していたそうで、姫街道と呼ばれるようになったとのことです(諸説あり)。篤姫もこの姫街道を通ったそうです。

42.姫様もなか

大名家の女性用駕籠を模った最中で、包みには衣装を入れて運ぶ挟み箱が描かれています。程よい甘さの粒餡としそ餡の2種類がありますが、他の菓子を眺めていたら、常連らしき人がしそ餡を全部買い占めていってしまいました。また買いに行かねば。

長坂の旧道と気賀の関所

姫街道は隣の磐田市の見付宿から始まり、池田の渡しで天竜川を越えて北寄りに進み、気賀の関所を通って浜名湖を北に迂回し、本坂峠を超えて愛知県豊川市の御油で東海道に合流します。気賀の手前に旧道が残っている場所があるので行ってみました。今は県道として整備された姫街道の脇にある旧道は、老ヶ谷の一里塚からさらに細くなり車が入れない長坂へと続きます。こんな所を駕籠を担いで歩いたの?と疑いたくなるような急な坂は前日の雨で湿っており、滑らないよう気を付けて下りました。

42.気賀関所

こちらは復元された気賀の関所で、元の位置より少し西に建っています。案内所で通行手形を買うと入れます。着替え体験ができ、子供姫や侍、町娘、忍者などの他、おんな城主直虎や子供用の井伊の赤備え甲冑もあるようです。細江町では4月の第1土・日に姫様道中が行われ、90人の大行列が桜並木を歩き、腰元や奴衆の踊りも披露されます。来年から日程が変わるかもしれないので、行く前に確認を。

姫様もなか

外山本店 静岡県浜松市北区細江町気賀68-2 053-522-0172 木曜定休 1個129円+税
姫街道の気賀四ツ角信号を北へ100mほどのところです。銅鐸最中の外山製菓と間違えたのですが、親切に道案内してくれました。姫様道中では休憩中の姫様に姫様もなかを出すのが恒例となっているそうです。洋菓子の姫様スティックが一番人気のようです。店舗横に駐車場あります。

銅鐸最中:静岡県浜松市

銅鐸と可憐な花の公園

やっと暑さが収まってきた秋分の頃、花を見に行こうとの誘いを受けてやって来たのが浜松市細江のどうたく公園。絶滅危惧種のシラタマホシクサを地元のNPOが育てている場所です。テレビのローカル番組で紹介されたらしく、谷合いの小さな公園には4組ほどの人たちが来ていて、白い小さな花にカメラを向けていました。

この公園は斜面に張り付くように作られた小さなもので、駐車場から土を固めた急な階段を上がると柵に囲まれた発掘場所に銅鐸のレプリカが置かれています。子供たちが遊べるような公園ではありませんが、この上には手作りの小さなフィールドアスレチックがあるようです。この日はゲートが閉まっていました。

41.銅鐸最中

細江はみそ饅頭が有名で、小さな街に和菓子店がいくつもありますが、そのうちの1軒に銅鐸最中があります。三遠式銅鐸の皮種に入っているのは、粒餡、白餡、みかん餡の3種類。程よい甘さの餡がたっぷりです。白餡には小豆粒が混ざっており、みかん餡は刻んだ皮のほのかな苦みが白餡とよく合います。

浜名湖周辺で26個

細江町では9個の銅鐸が見つかっており、この滝峯の谷の斜面には点々と6個が見つかっています。どうたく公園のものは、滝峯才四郎谷銅鐸と呼ばれる近畿式銅鐸です。平成元年に研究者が発見したもので、金属探知機による発見は全国初とのことです。この付近では三遠式銅鐸と近畿式銅鐸が出土しており、同じ集団によって埋められたと推測されています。これにより2つの銅鐸圏を巡る議論がより複雑になったようです。

41.銅鐸公園

公園を見学した後は、細江町の民俗資料館へ。1階は浜名湖の漁や藺草と畳表生産の道具、2階は出土した銅鐸と姫街道の資料が展示されていています。このうち悪ヶ谷銅鐸はレプリカで、本物は東京国立博物館にあります。入場無料で、申し出れば展示品の写真撮影OKです。姫街道については別の最中があるので近々紹介します。

銅鐸最中

お菓子のとやま 静岡県浜松市北区細江町気賀129-1 053-522-0321 火曜定休、10日火曜は営業・翌日休み 1個120円
姫街道の1本西で、天竜浜名湖鉄道の線路脇、うなぎの清水家の向いです。リニューアルした広い店舗で駐車場は6台分。細江名物のみそ饅頭は人気が高く、1日3回の作りたてが購入できます。ところてんや直虎豆腐(お菓子です)、洋菓子もあります。

製造終了と復活最中

なんてこった!製造終了

全国の最中情報を探っていると廃業してしまった店の情報も出てきます。最中旅が休止中なので、特別企画として今や手に入れることができなくなった最中をいくつか紹介します。

・天文台もなか:山口県浅口市
国立天文台に因んだ最中でしたが10年前に閉店。2年前には京都大学の天文台もできたというのに・・・。復活希望。

・カニ最中:愛媛県鬼北町
地元の川に生息するカニに因んだ最中。いつの間にか閉店したようです。愛媛の最中旅で行く予定だったのに残念。

・ふじもなか:静岡県磐田市
熊野御前(ゆやごぜん)お手植えの長藤に因んだ最中。2年前に閉店。藤色の餡の最中でした。近くだったのに一度も食べたことなく、泣ける。

・蜆塚最中・静岡県浜松市
縄文時代後期の貝塚に因んだ最中。数年前に閉店したようです。遺跡と博物館には数回行ったことがあるのですが、竪穴式住居の形の最中について知った時には既に遅し。

復活を遂げた最中

2年前の4月だったでしょうか。静岡市の大井川上流の井川で売られている最中を買いに行こうとした時のことでした。念のために行く前に電話をしてみたところ、店のご主人が2か月ほど前に亡くなられ、廃業してしまったとのこと。井川メンパ(曲げた桧に漆を塗った弁当箱)の形をした最中は幻となってしまったのかと、がっくりと肩を落としたのでした。

ところが今年の4月下旬にこの最中が復活したとの情報が入ってきました。井川振興会の有志らがこの地元銘菓を復活させたのです。販売は5月1日から始まっていますが、当面は通信販売のみです。そのうち井川ビジターセンターなどでの販売を考えているそうです。この最中の名前は「メンパ最中てしゃまんく」。「てしゃまんく」については通常の最中旅のブログ記事にていずれ紹介します。

亀寶:静岡県焼津市

焼津の鰹節

こんな時期なので予定していた最中旅は延期にして、3月に人混みを避けて車で焼津まで行って来ました。途中、吉田町の大井川河口の広大な公園でチューリップを眺めてから対岸の焼津市へ。焼津と言えばカツオやマグロ漁の町ですから、カツオの最中があるかと思いきや、なんと鰹節の形の最中があるのです。

亀寶

「きほう」と読みます。亀節と呼ばれる形の鰹節を模った皮種に、餡は程よい甘さの小豆餡で、上品な味わいの最中です。焼津のお使い物の定番らしく、他の2組のお客さんも仕事関係で買いに来ていた様子でした。

新嘗祭に神饌として献上

正倉院の古文書に、鰹を煮て干した煮堅魚を税として納めていたと記されており、鰹の加工品は奈良時代から駿河の国の特産物だったようです。今では皇居での新嘗祭に焼津の鰹節が献上されています。最中の形にもなっている亀節は三枚に下したもので、サイズが大きいものは半分に切り分けて本節と呼び、その背側を雄節、腹側を雌節と呼びます。どれが上等なのかと思ってしまいますが、この呼び方は品質には関係ないのだそうです。

鰹オブジェ

焼津の目玉施設である焼津さかなセンターを覗いてみたら、今般の事情で当分営業を休止する店がいくつもあり、いつもは観光バスが並ぶ駐車場には4~5台の乗用車のみでした。上の写真は東名高速の日本坂パーキング上り側にある鰹のオブジェです。焼津インターから見えるマグロ店の屋根には大きなマグロの模型が乗っています。魚以外では、焼津が好きだったという小泉八雲記念館やサッポロビールのビオトープ園なんかもあります。

亀寶

白憙久 静岡県焼津市本町5-1-3 054-628-2213 水曜定休 1個150円
焼津市役所アトレ庁舎と焼津5丁目信号の間です。大きくはないですがきれいな店内には菓子博での受賞盾がいくつも飾ってあります。波志ぶきというチーズブッセも人気のようです。駐車場はないようで、店前の歩道に片輪をかけて駐車しているお客さんもいました。

大甕もなか:愛知県常滑市

とこなめ焼きの大がめ

知多半島最中旅の最後は、半島中央の西海岸側にある常滑市にやって来ました。中部国際空港、通称セントレア空港がある市です。とこなめ焼と言えば朱泥の急須が思い浮かびますが、古くは奈良時代から大型の甕や壺を生産してきた地で、近代では陶器の土管や火鉢の産地でした。市の中心部へ向かう前に、大甕を模った最中があるという店を訪ねました。

大甕もなか

自然釉のかかった甕の形の皮種に、程よい甘さの小豆餡が入っています。古くから生産が続く大甕のように、変わらない味わいを表現したという最中は、バランスのいいオーソドックスな最中です。

やきもの散歩道と招き猫通り

市の中心部の大通りの裏には陶器店や陶芸教室、作家の工房が密集している地区があります。昔の窯の煙突が残る丘には、坂道の各所に壺や土管が埋め込まれた小径が複雑に張り巡らされています。迷路のような道を行きつ戻りつしながら店先の焼き物を眺めました。甕などの伝統的な焼き物の他にも、かわいい作品や他の産地の技法を取り入れた美しい作品もあり、結構楽しめました。

焼き物の小径

常滑市陶磁器会館がある大通りは「とこなめ招き猫通り」という名が付いており、切り開かれた丘の上から巨大な招き猫が顔を出し、コンクリートの法面には様々な作家の手による個性的なご利益招き猫たちが39体並んでいます。1点ずつ見ていくとなかなか面白いですよ。

大甕もなか

早川屋製菓舗 愛知県常滑市苅屋字深田124-1 0569-35-4041 火曜定休 1個120円+税
中心街より4kmほど南の国道247号沿いで、多賀神社の向かいです。以前は苅屋町の旧道沿いに店舗がありましたが、こちらに移転しました。店先に大甕が置いてあります。白餡と生クリームを使った「知多娘(ちたっこ)」も人気だそうです。