あらい手筒もなか:静岡県湖西市

練り歩く手筒花火

浜名湖西岸の湖西市に行って来ました。湖西と聞いて思い浮かぶのは新居の関所、浜名湖競艇、そして手筒花火です。7月に諏訪神社奉納煙火があるのですが、今年も中止のようだし、いずれにせよ夏は最中のオフシーズンなので、3月下旬に行って来ました。

7月最終日曜日の祭典前、金曜と土曜の夜に数種類の手筒花火が奉納されます。筒の底が破裂しない江戸時代方式なので、以前は宿場から諏訪神社まで持って練り歩いたとのことですが、今は安全を考慮して中学校と小学校の校庭で行うようになりました。細工花火や大筒などの後、太鼓とほら貝が鳴り響くなか十数本の火柱が乱れ立つ猿田彦煙火で祭りは最高に盛り上がります。

49.あらい手筒もなか

手筒花火に因んだ最中は、竹筒を縄で巻いた手筒の形で、砂糖だけで炊いた小豆餡は粒がつぶし気味で程よい甘さです。この日は店頭にありませんでしたが、すぐに作ってくれました。同じ皮種を使ったフロランタン(アーモンド菓子)もあります。

唯一の現存関所―新居関所

東から来ると、浜名湖を渡り新居の駅を過ぎて600mほどで新居の関所があります。正式には今切関所と言い、出女のみならず入り女にも手形が必要という厳しい関所でした。明治になって各地の関所が取り壊されるなか、小学校などに利用された為、建物が残る唯一の関所となりました。かつて浜名湖の今切口(いまぎれぐち)に面していた船着き場も一部残っており、高麗門を復元したり、無料駐車場を設置するなど、周囲の整備も進んでいます。

49.新居関所と船着き場跡

さて、また手筒花火に戻りますが、花火は専門職に依頼して作っているわけではなく、町内の「花火野郎」が竹を切り出すところから火薬詰めまで自分たちで行っているそうです。花火を奉納した後の手筒は厄除けや商売繁盛の縁起物として軒先や玄関に飾るそうで、関所近くの紀伊国屋資料館内にも展示されています。

あらい手筒もなか

まんじゅや 静岡県湖西市新居町新居1529 053-594-0347 火曜定休 1個130円費税
関所から西へ進んで丁字を左へ曲がって50mほど。ホイルに包んで焼いた「花火野郎」が人気商品で、和生菓子や春限定の郷土菓子「すわま」も。店の奥ではぜんざいやかき氷が食べられます。店先に1台分の駐車場あります。

みかん最中:静岡県浜松市

浜名湖の奥のみかん産地

蜂蜜を買いに三ヶ日町(みっかびちょう)に行ってきました。浜名湖北西部分の猪鼻湖を取り囲む地域です。今は浜松市の一部になりましたが、東名高速のインターチェンジや第2東名とのジャンクションの名称で馴染みがありますよね。

そんな三ヶ日はみかんの町。夏の間みかん山を飛び回っていた蜂たちは冬眠中ですが、蜂蜜店には続々とお客がやって来ていて、入店制限しているものの店内は結構な蜜状態でした。蜂蜜店の隣にはみかん最中で有名な和菓子店があるのですが、今回紹介するのは別の店の最中です。

葉っぱが付いたみかんがデザインされた皮種に、三ヶ日産の青島みかんを使った餡が入っています。白餡がベースですが、刻み皮が香るみかん色の餡です。販売を停止していた時期がありましたが、古くからのファンの要望もあり、復活したそうです。

生鮮食品初の機能性表示

三ヶ日みかんというのは品種ではなく、三ヶ日で生産されるみかんのブランドで、機能性食品としての表示が許可されています。骨にいいとされるβ-クリプトキサンチンと、2020年には血圧を下げる機能があるGABAが追加されました。三ヶ日町農協では、特殊な方法で栽培した濃密青島みかんやβ-クリプトキサンチンが入ったみかんジュースも販売しているようです。

48.三ヶ日のまんさく群生

訪れたのが2月の終わりで、みかんの収穫はとっくに終わっているので、乎那の峯のまんさく群落を見に行きました。天竜浜名湖鉄道の奥浜名湖駅の裏手にあって、三ヶ日桜とともにちょうど満開でした。地味な花なので、気付かずに帰ってしまう人も。みかん山については11月くらいに写真を撮りに行って、最中データ一覧のページに追加しようと思います。

みかん最中

パティシエみつわ 静岡県浜松市北区三ケ日町都筑1873 053-526-7031 火曜定休 1個140円
三ヶ日インターから車で西へ5分ほど。都筑駅からは徒歩3分。みかんケーキなど洋菓子が多いですが、福々饅頭が売りの庶民的な店です。駐車場から出る際は、見通しがよくないので気を付けて。

高天神最中:静岡県掛川市

難攻不落の山城

こんなご時勢なのでハイキングに行こうということで高天神城にやって来ました。十数年前に訪れた時は人影は無く、道案内の看板なども小さかったのですが、続日本100名城に選ばれて、駐車場が整備され、見学者も続々とやって来ていました。高天神社の参道になっている搦手(からめて=城の裏)側は駐車場が広いのですが、正面の追手門(おうてもん=大手門)から入城しました。

曲輪や櫓跡からの眺めはいいのですが、その外は木々に隠された断崖。落ちたら登ってくるのは不可能です。荷物落下注意!急坂を上ってやっとたどり着いた本丸には元々天守は無く、今はいくつかの石碑があるのみです。御前曲輪には一時期建っていた模擬天守のコンクリートの基礎が無粋にも残っています。搦手側に下りると、行く手に見上げるような石段が現れます。高天神城が廃城になってからも地元の人の心の拠り所となっていた高天神社です。その天神社の梅の紋が最中になったのがこちら。

47.高天神最中

梅の紋に高天神の文字が入った最中です。程よい甘さの小豆餡と、抹茶の味が濃い抹茶餡の2種類。包みには石垣の模様がありますが、高天神は中世の山城ですので石垣ではなく土塁が築かれています。以前は2軒の店で買うことができましたが、近いほうの店は廃業してしまいました。

信玄が落とせなかった高天神

鎌倉時代に砦が築かれたと伝わっており、今川没落後に徳川の城になりました。武田信玄が攻めきれなかった高天神城を、子の勝頼が落として名を上げましたが、その後徳川は補給路にある城を悉く攻略し、兵糧攻めにて高天神を奪還します。そしてこの2回目の戦いに援軍を出せなかった勝頼はその名声を失うこととなったのです。

47.高天神城の内部の道

山自体は高くないのですが、木の根が浮き出た段差の違う階段状の曲がりくねった急坂が続きます。天神社の横の馬場平は遠州灘が見える展望台になっていて、その端には、行った者は必ず後悔するという横田甚五郎の抜け道が。どこまで続いているのか不明なので、行く際には万全の準備を。そんなわけで高天神は中世の山の砦感を満喫できる城でした。御城印は掛川駅南口構内の観光協会ビジターセンターで入手できます(訂正しました)。スタンプは大東北公民館で入手できます。城入口に周辺案内の印刷物が置いてあります。

高天神最中

鈴木屋菓子店 静岡県掛川市高瀬2017 0537-74-2053 月曜定休 1個105円
大東北公民館沿いの38号を北に行って右カーブした先の小貫の信号の手前です。高齢の夫婦がやっていて、近所の方がおでんを買いに行くような店です。留守だったり、最中が無い時もあるようですが、電話をすれば用意しておいてくれます。

タイル最中:岐阜県多治見市

多治見笠原はタイルの町

前回の土岐市の隣、やはり陶器産業が盛んな多治見市にやって来ました。まずは、虎渓山永保寺に寄って、夢窓国師が作った庭園を散策しました。大イチョウは散った後で、モミジも半分ほどは落葉していましたが、大きな池と橋や岩山、湾曲する土岐川などをゆっくりと楽しみました。さて、タイル産地の笠原町へ行く前に、最中を紹介しましょう。

46.タイル最中

タイルをイメージしたような四角い皮種にタイル最中の文字が浮かんでいます。寒天を使っていない餡は少し甘めでもっちりしています。包みにはタイル工場や窯の煙突が並ぶ景色が描かれています。

モザイクタイルの街

永保寺から街中へ出て大通りを横切り、しばらく南下して多治見市笠原町へやって来ました。ここはタイルの一大産地で、最盛期には100以上ものタイル工場があったとか。いまも操業しているタイル工場やガソリンスタンドの塀、店の壁などにモザイクタイルの装飾を見つけました。レトロなものから異国風、鳥獣戯画のような絵までモザイクタイルで作られています。また、この地区のゴミ集積所はどこもタイルで飾られていました。

多治見の街中のタイル

かつて竈や流し台、風呂場などに使われていたモザイクタイルは一時姿を消しかけましたが、デザイン性が見直されて水回りの装飾に使うことも増えてきているようです。いろいろなタイルを見てみたいと思ったら、モザイクタイルミュージアムがあります。タイル原料の粘土山の形をしたユニークな外観で、展示の他にコンシェルジュがいるショールームや絵付け体験工房があります。

タイル最中

美濃屋菓子舗 岐阜県多治見市笠原町上原1647-366 0572-43-2849 水曜定休 1個100円+税
モザイクタイルミュージアムから北へ2.5kmほどの住宅地域にあります。どらやきや大福などが並ぶ、地域に根付いた店のようです。3月4月には郷土菓子のからすみも販売しています。店の向いに駐車場あります。

とっくり陶祖最中:岐阜県土岐市

徳利の名産地

今年最後の最中旅は岐阜県美濃地方へ行って来ました。美濃焼は黄瀬戸や志野、織部など様々な種類の焼き物の総称で、土岐市下石町(おろしちょう)では徳利が有名です。製陶工場から小規模な窯元まで多くの生産者がこの地区に集まっています。そんな土岐市には、もちろん、徳利に因んだ最中があります。

45.とっくり陶祖最中

らっきょう徳利の形の皮種には陶祖の文字が刻まれていて、丸くふくらんだ胴には程よい甘さの餡がたっぷりと入っています。岐阜県菓匠会の最高名誉賞を授与されたことがあり、土岐市観光協会の推奨銘菓にもなっています。

とっくりとっくんに会いに行きました

徳利を擬人化したキャラクターがとっくりとっくんです。妻木川沿いのとき窯元街道のローソン向いに陶器のとっくん達がたくさん集まっています。その丁字路を入ってすぐ左に曲がると下石町裏山地区に入ります。ここはとっくん小径と呼ばれていて、そこここに様々なポーズのとっくんがいます。だいたい酔っぱらっていますね。

とっくりとっくん

窯元が集中している場所で、小径が複雑に入り組んでいますが、陶製の案内板が数か所ありますので迷うことはありません。しかも、ミニチュアの製品が貼り付けてあって各窯元の作風もわかるようになっています。また、下石町の陶器産業の礎を築いた陶祖加藤庄三郎氏家の墓がある陶祖公園や、古い窯の煙突も見ることができます。道が狭いので歩いて散策するのがいいですよ。少し離れますが、街中の下石陶磁器工業協組に駐車できます。

とっくり陶祖最中

虎渓 岐阜県土岐市土岐津町土岐口2091-2 0572-55-3047 水曜定休 1個150円
市役所のほぼ向いで、駐車場は市役所側にあります。大きな天井ライトが土岐氏の桔梗の家紋になっていて目を惹きます。第2第4金曜日は最中の日で、ばら売り一人10個まで120円で購入できます。