秋葉さん最中:静岡県浜松市

全国の秋葉神社の総本宮

行楽の秋。紅葉を見に行こうということで、秋葉神社に行って来ました。浜松市の中心部から直線距離で40kmほどの旧春野町で、赤石山脈の南端の秋葉山にある火防の神を祀る秋葉神社の総本宮です。地元では秋葉さんと呼ばれています。

船明ダムを過ぎて天竜川沿いに北上し、石灯篭が目印になっている橋を渡って参道に入ります。ここからは山道になっていて、観光バスとギリギリですれ違って上へ上へと曲がりくねった道を進み、大鳥居の前の広い駐車場に着きました。長い階段が山頂へと続いており、両脇には「やつで」のマークが付いた石灯篭が並んでいます。やつでは秋葉さん最中にもあしらわれています。

秋葉さん最中

天狗の羽団扇とも呼ばれるやつでの形に、縦に秋葉さん、横に遠州という文字が入っています。中は程よい甘さの小豆のつぶし餡です。包みは小倉と書かれたシールで止めてありますが、餡は小倉(≒つぶし餡)1種類です。

天狗と秋葉神社

さて、何故やつでが秋葉神社のマークになっているかというと、秋葉神社は明治になるまでは秋葉大権現という名称で秋葉山三尺坊という天狗が祀られていました。羽団扇で火を操る天狗が、イザナミとイザナギの御子である 火之火具土神(ほのかぐつちのかみ) にとって代わられたのですが、天狗の羽団扇の紋がそのまま残ったようです。春野町には大きな天狗の面や下駄のオブジェがあったりして、天狗は今でもこの地区のシンボルとなっています。

秋葉神社上社

山の上の神社は上社で、12月16日に行われる秋葉の火祭りという防火祭で三舞の神事の舞台となる神楽殿や立派な神門、金ぴかの鳥居があり、武田信玄を始め名立たる武将の刀が奉納されていたりするのですが、もうひとつ天竜川の支流の気田川沿いに秋葉神社下社があります。こちらは一般道からすぐに辿り着けますが、規模は小さく、杉林に囲まれた薄暗い社に明かりが灯っていました。

秋葉さん最中

月花園 静岡県浜松市天竜区春野町堀之内973-4 053-985-0014 1個110円
上社からは遠いですが、下社からは2kmほどです。素朴な感じの店で、郷土菓子の「青ねり」を主に販売しています。最中は置いていない時があるので、事前に電話予約をすると確実です。

天来最中・小琴最中:長野県佐久市

現代書道の父

比田井天来(ひだいてんらい)という人物を知っていますか?「書は芸術である」として新境地を切り拓いた、現代書道の父と呼ばれる書家です。佐久の最中を調べていて初めて知りました。下仁田からの帰りに佐久を通るので、行って来ました。

荒船風穴と神津牧場の後、コスモス街道を通って長野県の佐久市に出ました。佐久と言えば鯉ということで鯉最中があるのですが、この日は定休日だったのでまたの機会に。千曲川を渡ってそのままずっと西に10kmほど進み、佐久市に合併された元の望月町まで行きました。

天来最中・小琴最中

横が7.5cmと大振りの天来最中の皮種には別号の「畫沙(かくさ)」の落款、裏には天来と入っています。 妻の小琴(しょうきん)の名が併記された小さめの最中は、同じ落款に裏は小琴となっています。少し甘めのつぶし餡で、食べ応えがあります。包み紙の上の落款はこれも別号の比田井象之です。

記念館と自然公園

市役所の隣にある天来記念館は日本初の書道専門美術館だそうで、天来の作品や筆、落款などが展示されています。かな書道の最高指導者だった小琴や、門下生たちの作品も見ることができます。また生家の裏山には地元のNPO法人が整備した天来自然公園があり、天来と門下生の書の石碑が9基建っています。公園へ続く道には案内板があるのですが、その先は木々が覆いかぶさる細い道です。公園に入る小径の前に車が方向転換ができるスペースがあってほっとしました。

天来自然公園

書道家の聖地として毎年訪れる団体もあるようで、秋にはこの公園で天来祭りが催されます。望月町が佐久市と合併してから、天来の影が薄くなってしまったと嘆く人もいるそうで、なんとか盛り上げようとしているようです。また、望月地区には3千体もの石仏が町のあちこちにあり、石仏の里とも呼ばれています。

天来・小琴最中

喜月堂 長野県佐久市望月168 0267-53-2012 第1・第3日曜定休 1個180円/130円
天来記念館の近くの旧中山道沿いにあります。一般的な菓子も売っている庶民的な感じの店です。駐車場はないようなので、店の前に停めました。

荒船風穴最中:群馬県下仁田町

絹産業の世界遺産

今回の最中旅の第一目的である荒船風穴は、下仁田の中心街から車で35分の山の中にあります。土日は神津牧場側の駐車場から800mの山道をシャトルバスが出ていますが、平日なので反対側のルートを行きました。

車を停めて矢印に従って細い急坂を登ると料金所の小屋の前に出ました。入場料を払って記念の世界遺産カードを1枚選んだら、ガイドさんが小屋から出てきて案内してくれました。今は石垣の囲いが残るのみですが、冷たい風は出ていて、この日の下界は25度ほどの気温だったのですが、1号風穴の中は2 . 4度!そんな風穴を表現したという最中を来る途中の和菓子店で入手しました。

荒船風穴最中

蚕のまゆの形の最中にはシルクパウダー入りの小豆のこし餡が、石垣の形には風穴の冷気を表現したというハッカ油入りの白こし餡が入っています。皮種は薄く、餡は程よい甘さです。ハッカは効きすぎることなく、最中に清涼感を与えています。まゆ2個と石垣3個のセットで化粧箱に入っています。

絹の大衆化に貢献

荒船風穴は石垣の囲いの中に2階建ての小屋がありました。この中に蚕の卵を貯蔵して、時期をずらして風穴から出し孵化させます。1年に1サイクルだった養蚕が何度も行えるようになったのです。国内最大の規模で、42道府県と、さらに朝鮮半島との取引もあったとのこと。洞窟型の風穴と異なり、温度の違う3基の風穴で徐々に自然の状態に戻すことができます。風穴がある地域からの、リスク分散のための委託も多かったそうです。

荒船風穴

上の画像は見学用デッキから撮った風穴。デッキの隅に風穴が使われていた頃の写真があります。昔はこの風穴の脇の小道を何十頭もの馬が長野県の佐久から米を運んできたそうです。下の集落は賑わい、馬で荷物を届ける宅配便のような商いもあったとか。この日は観光客もまばらで、集落で飼われている甲斐犬の声が山々に木霊していました。

荒船風穴最中

古月堂 群馬県甘楽郡下仁田町本宿3760 0274-84-2417 火曜・第3水曜定休 2種5個入り700円
国道254号から県道43号に入る上州姫街道の宿場町だった所にあります。2017年の群馬土産3位に選ばれた「本宿どうなつ」の店で、254沿いに大きな看板が建っています。北関東自動車道の前橋南インター近くに支店があります。

万葉の峰:群馬県下仁田町

山々を眺め下仁田へ

富岡製糸場とともに世界遺産登録されている絹産業遺産群の荒船風穴を見に行って来ました。静岡県の清水から北上し、甲斐駒ケ岳や八ヶ岳を眺め、浅間山の手前から上信越自動車道へ。妙義山を北から周ってネギとコンニャクの町下仁田へ到着。

街中から再び山方面へ向かうのですが、その前に駅近くの和菓子店へ直行。店の前に着いたのですが、納品で留守にするとの張り紙が!なんてこったと思っていると、ちょうどそこに店の人が帰ってきました。通りがかったご婦人がよかったですねという風に微笑みかけてくれました。

万葉の峰

皮種は画像の荒船山の他に妙義山、神津牧場、黒滝山不動寺の全4種類があり、ランダムな2種類の組み合わせになっています。若葉色に色付けされた白こし餡に柚が練りこまれたさわやかな風味の最中です。

奇岩を仰ぐ

店を後にして、日本三大奇景のひとつである妙義山へ。下仁田町と富岡市、安中市にまたがる幾つかの山の総称で、ハイキングコースから縦走ルートまでとレベルに応じた登山が楽しめます。下仁田側からは県立森林公園さくらの里から岩山を目の前にすることができます。広い駐車場から絶景を眺めた後、荒船風穴へ向かったのですが、これについては次回紹介します。

妙義山

荒船風穴を出て、日本で最初の洋風牧場である神津牧場へ。牧場産のハンバーガーとソフトクリームを食べて、チーズやバター飴などを購入し、店員さんに荒船山がよく見える場所を教わりました。荒船山は船の形をしたテーブルマウンテンのような艫(とも)岩が特徴的。最中の絵とは反対側からの眺めです。最中の絵の最後のひとつ黒瀧山不動寺は、今回は訪れませんでしたが、下仁田町の南隣の南牧村にあります。

万葉の峰

総本家紙屋 群馬県甘楽郡下仁田町下仁田361 0274-82-3228 木曜定休 1個108円
下仁田駅から徒歩で2分ほど。紙問屋だった頃の屋号をそのまま使っているそうです。下仁田ネギの饅頭や洋菓子も作っていて、桑の葉と練乳を使った焼き菓子の「荒船Who-K2」もあります。

きんめ鯛もなか:静岡県下田市

キンメダイ日本一

黒船来航に平井平次郎翁と、歴史に因んだ最中を紹介しましたが、下田最中旅の最後は、現在、日本一の水揚げ量を誇るキンメダイです。

鯛という名がついていますが、水深200から800メートルに住む深海魚で、大きな金色の目は深海で光を集めるために進化したようです。1年中おいしいキンメですが、一番脂が乗る冬が旬です。下田の観光ガイドによると、品質の統一や輸送手段の確保に努めた下田が日本一の漁獲量を誇るようになったということです。

きんめ鯛もなか

キンメダイの形をした最中は2種類あります。こがし種が粒餡で、桜色がこし餡です。両方とも刻んだ栗が入っていて、程よい甘さの小豆とちょうどいいバランスです。パッケージにはイラストと赤白金のキンメカラーが散りばめられています。

下田湾を一望

キンメダイの船は朝7時半ころ港に帰ってくるそうですが、もう昼近くだったので、伊豆急下田駅近くから出ているロープウェイで寝姿山へ向かいました。夏休み期間中とはいえ平日なのにロープウェイは乗客でいっぱいです。山頂の展望台から下田湾を見下ろすと、湾の中央には犬走島、手前が毘沙小島で、遊覧船サスケハナが停泊しているのも見えます。この日は薄曇りでちょっと残念。

下田湾

左の須崎半島側にはハリスの小径という石畳の遊歩道が海岸沿いに続いており、そこからの夕陽に染まる下田湾が美しいと評判です。1泊すればこの夕陽を見て、朝は魚市場も見学できますね。市内には1年中キンメ料理を提供する店が何軒もあります。また、旬は冬ですが6月の下田キンメ祭りの頃も脂が乗っているそうです。伊豆急を利用するなら、行きは黒船電車で帰りはキンメ電車なんてのもいいですね。

きんめ鯛もなか

平井製菓 静岡県下田市2丁目11-7 0558-22-1345 火曜定休 1個180円+税
下田文庫と同じ店です。きんめ鯛もなかは下田の東急ストアでも販売していました。道の駅などでも取り扱っているかもしれません。