奉行最中:神奈川県茅ケ崎市

奉行といえば大岡越前

茅ヶ崎で「奉行最中」と壁に書かれた和菓子店を見かけたと知り合いから情報がありました。奉行と聞いてまず思い浮かぶのは大岡越前ですが、茅ヶ崎とつながりが?と思い調べてみたところ、茅ヶ崎には大岡家代々の領地があったとわかりました。

大岡越前守(えちぜんのかみ)忠相(ただすけ)は 、徳川吉宗の幕政改革に江戸町奉行として携わりました。また、愛知県岡崎市の西大平藩を与えられて大名となり、後に寺社奉行も務めています。家紋は大岡玉垣ですが、忠相は大岡家の独占紋である大岡七宝を用いていたそうです。その大岡七宝紋をあしらった最中がこちら。

奉行最中

包みと皮種が大岡七宝になっており、奉行の文字が入っています。粒餡とこし餡は甘さ控えめのもっちりした餡です。柚餡もあり、柚を練りこんだ白餡で桃色の皮種です。以前は包みのデザインがはっきりした色でしたが、今はこの渋い色になっています。

手入れの行き届いた静かな菩提寺

茅ヶ崎では大岡家の墓所を訪ねて浄見寺に行って来ました。圏央道を茅ヶ崎で下りて北上し、大岡越前通りへ向かいます。大岡越前通り!江戸の雰囲気を期待しましたが普通の道でした。そこから細い道を入って浄見寺に到着。立派な門柱があったので入って行ったのですが、そこは寺の裏側でした。山門は少し先で、向かいにある茅ヶ崎市民族資料館には無料駐車場があります。

浄見寺

山門前には大岡越前守菩提所の石柱が建っています。きれいに手入れされた寺ですが、平日の昼過ぎに参詣者は無く、大岡家の墓所を囲む柵には鍵がかかっていました。申し出れば近くで見ることができるようです。静かな雰囲気を楽しむことができますが、5月の大岡越前祭りには墓前祭や越前行列などが行われ、とても賑わうようです。

奉行最中

湘南冨士美 神奈川県茅ヶ崎市萩園2658-18(本社工場売店)
0467-82-3310  無休 2個324円
工場の売店は販売スペースが小さいですが、茅ヶ崎駅のラスカ内やJR相模線の香川駅前、また寒川町や藤沢市鵠沼海岸にも店舗があります。かりんとう万十が人気なようです。

茶山最中:静岡県川根本町

大井川沿いの山間の茶所

大井川沿いを蒸気機関車が走る川根本町は、古くからのお茶の産地です。お茶の販売店や和菓子店では茶羊羹を作って販売している店がいくつかあるのですが、最中もあると聞いて行ってきました。

蒸気機関車の運行時間に合わせて大井川沿いを車で北上しました。吊り橋の下を通ったり、道路より低い所を並走する区間もあり、撮影スポットには、平日にもかかわらずカメラを構えた鉄道ファンが何人かいます。SLを追うように終点の千頭(せんず)駅まで行き、目的の最中の店へ。

茶山最中

茶壷の形の最中には、もちろん抹茶餡が。白餡に川根茶の粉末を混ぜた餡はさっぱりした甘さです。5個入りと10個入りがあり、ビニール袋の包装です。 千頭駅から少し奥へ行った所に同じ茶壷形の「川根最中」がありましたが、2018年に県外へ移転してしまいました。

鉄道ファンで賑う千頭駅

最中を買って駅に戻ると転車台で方向転換するSLを発見。乗客がプラットフォームの端に集まって写真を撮っています。人力で転車台を動かすんですね。へー。6月下旬から11月末まではトーマス号の運行や仲間の機関車が集合するフェアがあり、千頭駅は子供連れで大賑わいだそうです。SLはこの千頭までですが、この先の大井川鐡道井川線には今や日本で唯一となったアプト式で走る区間があります。日本の鉄道路線で最も急な勾配だとか。

千頭駅SL

さて、肝心なお茶の話ですが、川根茶は鎌倉時代に聖一国師が中国から持ち帰った茶の種を撒いたのが始まりと言われています。江戸時代には紀伊国屋文左衛門が江戸に持って行って評判になり、昭和には茶業界初の天皇杯を受賞しました。爽やかな香りが特徴で、色は透明感のある黄金系。ゆっくりと味わってほっとするタイプです。

茶山最中

杉本屋 静岡県榛原郡川根本町千頭1216-13 0547-59-2222 無休 5個520円
千頭駅から徒歩1分のお茶羊羹の店です。駐車場はありませんが、店の前は駐車禁止ではないようですので、トーマスフェアが無い日なら駐車できそうです。一口サイズのお茶羊羹は6個入りで520円でした。

崋山最中・報民倉:愛知県田原市

飢饉に備えた報民倉

1833年から4年間、全国的に大雨による洪水や冷害が続き、農作物が大打撃を受けました。天保の大飢饉です。各地で多数の餓死者がでて一揆などが起こりましたが、田原藩では一人の餓死者もでませんでした。それは田原藩家老の渡辺崋山が飢饉に備えて建てた備蓄倉庫「報民倉」のおかげだったのです。

これによって幕府より表彰されていますが、渡辺崋山がどんな人物かあまり知られていないですよね。敏腕家老だったのだろうと想像はつきますが、蘭学者たちの指導者的立場だったり、海防について詳しいながら密かに開国を願っていたとか。また文人画家として谷文晁に師事し、自らの弟子には椿椿山らがいます。そんな崋山を誇りに思う田原市の銘菓がこちら。

崋山もなか
崋山もなか報民倉

米俵形の皮種に餡が入っているものと、自分で餡を詰めるタイプの崋山最中「報民倉」があります。薄緑色に色付けされた滑らかな白餡に、少し混ざった小豆の粒餡が互いの風味を引き立てあっています。報民倉は陶器の壺入りの餡と皮種が6個入っています。

田原市は崋山推し

田原市のある渥美半島は花の栽培が盛んですが、花の季節には少し早い時期に田原市へ行ってきました。田原市の観光地スポットと言えば伊良湖岬ですが、今回は半島の付け根に近い市街地にある崋山神社や田原城跡を巡ってきました。

渡辺崋山の銅像

中心地の大通りから脇へ入ると、すぐに田原城跡が見えてきます。巴形の湾に面していたことから別名「巴江城」。再建された大手門と二の丸櫓の奥には崋山の作品などが見られる田原市博物館があり、本丸と三の丸には神社が建っています。城の隣には、崋山神社、崋山会館が並んでいます。さらっと見学して、さらにその先の崋山の幽居跡と銅像がある池ノ原公園へ。抹茶とお菓子が300円という案内板に心惹かれながら静かな公園を散策しました。

崋山最中・報民倉

冨貴屋 愛知県田原市田原町築出57-13 0531-22-0248 月曜定休 崋山最中1個129円 報民倉1,300円
中心街の大通り沿いにありますが、駐車スペースあります。洋菓子も販売していて、店内で食べることもできます。報民倉は道の駅「田原めっくんはうす」でも販売しています。

出世城もなか:静岡県浜松市

浜松城で天下取りの足固め

浜松城は小さな城で、今ではコンクリート製の天守と2014年に復元された天守門があるのみですが、江戸時代の大名には大人気の城でした。なぜなら浜松城は出世城だったからなのです。

徳川家康が元あった曳馬城を名を改めて浜松城とし、城下町なども作られて発展しました。その後、松江城を築城した堀尾吉晴が在城し、石垣などを大改修。多くの松平家や水野忠邦などが城主を歴任し、浜松城は出世城と呼ばれました。そして2015年の家康没後400年を記念してリニューアルされたのが、この出世城もなかです。

出世城もなか

浜松の物造り技術を生かし、3Dモデリングで天守を高精度に再現した最中種です。程よい甘さの小豆餡は種とのバランスもちょうどいいです。個装は緑と紅色がありますが、中身は同じです。

現在も発掘続行中

城跡は浜松市役所の裏手にあって、公園として整備されています。広い無料駐車場がある公園側から入って、模擬天守を目指し天守門の外まで来たら、なにやら争うような声が聞こえてきました。よっばらいが騒いでいるのかな、大丈夫か?と思いながら門をくぐると、天守前の小さな広場で武将隊のような数人が芝居をしていました。ゆるキャラの家康くんがいることもあるそうですが、小さな城にはもっと落ち着いたきめ細かいおもてなしがいいかも。

浜松城

上の写真は2018年の6月中旬に撮ったものです。 同年10月に家康の関東移封後に作られたとされる櫓の基礎を発見したとの発表があり、今も調査が続けられています。豊臣が徳川をけん制するために堀尾氏が浜松城を強固にしたという具体的な様子がわかってきましたが、江戸時代の絵図には天守も櫓も描かれていないそうです。ちなみに家康は最初は隣の磐田市に築城しようとしていたのですが、信長が許さなかったそうで、磐田市には城山という地名のみが残っています。

出世城もなか

ふる里総本家 佐鳴台本店 静岡県浜松市中区佐鳴台6丁目6-6  053-448-9121  1個194円
店舗は市内に6店あります。浜松城の近くにはありませんが、浜松駅でも販売しています。お手盛りタイプもありますので別の機会に紹介します。

龍潭寺もなか:静岡県浜松市

井伊家の菩提寺

2017年のNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」に登場し、広く知られるようになりましたが、その前から小堀遠州の庭園で有名で、観光バスがやって来るような寺でした。随分昔に行ったことがあったのですが、大河が終わって落ち着いたであろうと、昨年の5月に再び行ってきました。

入口近くの駐車場は満車で、係の人が別の駐車場を案内しています。緑濃い境内では井伊家御霊屋や歴代住職の位牌を祀る開山堂、仁王門や本堂修復記念の鬼瓦などを見ることができます。本堂と庭園は拝観料が必要ですが、一般の墓所の奥にある井伊家の墓所は無料です。見学後は駐車場にある売店へ。

龍潭寺もなか

大河ドラマに合わせて作られた最中は小豆餡と黄金餡の2種類です。皮種には井伊家旗印の井桁紋が。赤備えの鎧兜のパッケージの黄金餡は、粒がほぼ残る白餡に柚ペーストを混ぜたもので、小豆餡とともにとても甘いです。

井伊家発祥は井戸端から

龍潭寺南側の田んぼの中に瓦屋根の門と白壁に囲まれた井戸が祀られていますが、この井戸端に捨てられていた子が長じて井伊家の初代当主となったそうです。井戸のある場所はかつては神社の境内だったのですが、明治の神仏分離令で神社は北西の天白磐座(てんぱくいわくら)遺跡の前に移転しました。その渭伊神社の 10月の例大祭には井伊家の弓や矢筒などの実物を使って祭祀が行われるとのことです。

龍潭寺

上の写真は龍潭寺の本堂で、屋根の上には井桁のマークがあり、また前庭の白砂は浜名湖の形になっています。行基が開創した臨済宗の寺で、本堂には左甚五郎作の龍や恙なしの彫刻、鴬張りの廊下などを見ることができます。徳川将軍家の茶道指南役、小堀遠州の庭園は本堂の裏にあります。

龍潭寺もなか

龍潭寺売店 浜松市北区引佐町井伊谷1989  053-542-1293 営業日・時間は龍潭寺( 053-542-0480 )と同じ
お菓子司あおい 静岡県浜松市東区有玉北町1594 053-435-3365 1個200円